Research Abstract |
心筋障害の発生・進展過程並びにその防御の問題を, 分子レベルで究明することを目的として, 公募研究16名を含む計59名からなる5計画研究班を発足・組織し, 各々心筋細胞の興奮・収縮機構, 心筋細胞機能の調節・適応と破綻, 細胞損傷・修復過程とその修飾因子, 虚血による障害とその防御細胞機能障害と心作動物質を主課題として研究に着手した. 本総括班の第一の目標は, これら5つの計画研究の効率を高め, その成果をより具体的な形で結実させるために, 研究組織の整合, 学際領域研究の促進を企ることである. 今年度は11月6, 7日の2日間合同班会議を開催し, 全班員が互いに研究進行状況を把握することによって役割分担を再確認すると共に, 臨床医学と基礎生物科学との有機的な研究協力体制を敷く基盤と形成した. 各研究班は心筋細胞機能の生物学的基本原理, 適応と調節, その破綻と防御という段階に分けて集中的に研究を進めつつあるが, 各班に共通する課題については, 随時学術集会をもち討議を尽すことによって, 各計画班の連係を強化した. 今年度は, 2回公開シンポジウムを開催し, 心筋細胞の電気活動とエネルギー代謝, カルシウムイオンと心筋細胞応答の問題を採り上げ, 研究の進展をまとめると共に今後の研究方向性について討議した. 総括班の第二の目標は, 細胞生物学や分子遺伝学の手法や知見が心筋細胞障害の解明にどの程度有効かを徹底的に模索し, その導入を積極的に推進することである. この点については, (1)細胞膜Na,Caチャンネルの構造-機能連関と心筋興奮, (2)心筋興奮収縮連関を可るNa, Ca転送の分子機構, (3)受容体, 伝達器複合体による細胞内情報伝達機構, (4)遺伝子調節による心筋収縮蛋白質の形質変換, を当面の重点課題とし研究を展開させることによって, 心筋機能の物質論的基盤を固めつつある. これら研究分野は, 米国との競争が激しい領域であり, 情報の収集交換も積極的に行った.
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