Research Abstract |
鶏インフルエンザウイルス(AIV)感染に伴って産生される抗S抗体の簡便な検出法の確立を目的として研究を行い, 本年度は以下の成果が得られた. 1.各種のAIVに対する抗血清の作成 A/C/Jpn24及びA/WS/島根/42/80株についてはSPF鶏を用いて感染及び不活化IV免疫血清を作成した. また, A/PR/8/34. A/D/Ukraine/1/63, A/D/Czech/56及びA/C/Germany/N/49株については不活化IV免疫血清を作成した. 2.IVのS抗原(核蛋白)の精製法の検討 超遠心法で精製したIV浮遊液, IV感染発育鶏卵漿尿膜の20%乳剤及び初代培養鶏腎, 継代犬腎(MDCK)又は豚胎児腎(ESK)細胞の各々5%乳剤の3方法で調整した5材料から, 超遠心法及びゲル濾過法でS抗原の精製を試みた. その結果, 精製IV粒子を破壊して得たS抗原は夾雑蛋白は少なく, 寒天ゲル内沈降(AGP)反応性がよく良質であったが収量が少なかった. 漿尿膜S抗原は夾雑蛋白が多く, 抗原価も低かった. 培養細胞由来S抗原は夾雑物が比較的少なく, 抗原価が高く反応も明瞭で, 3方法の中で最良であった. この性状はPAGEによって確認された. 3.S抗原に対する抗体(抗S抗体)検出法の検討 培養細胞由来のS抗原を供試して, 抗血清中の抗S抗体を免疫方法との関連においてAGP及びELISA法によって検索した. その結果, 抗SAGP抗体はAIV感染鶏ではHI抗体価64倍以上の個体は全例陽性であったが, 非精製不活化IV接種鶏ではHI抗体価512倍の個体でも陰性であった. しかし, IV粒子が破壊されるような条件で精製した不活化IV接種鶏では抗SAGP抗体が産生された. ELISA法による抗S抗体検出法は特異性に問題があった. 次年度では抗S抗体産生と免疫法及びELISA法について詳細に検討し, 本症診断上の意義づけを行う.
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