Research Abstract |
我々はマウスを用いた実験系で,脾付着性細胞を抗原提示細胞として抗原特異的T細胞クローンを刺激すると,上清中にT細胞IL-2受容体発現を増強させる因子が存在することを見い出している。この因子は,DEAEイオン交換,ハイドロオキシアパタイトカラム,ゲル濾過等で単峰の活性を示す。ゲル濾過による分子量4.0〜4.5万であり,等電点は4.5〜5.0の間に3峰を示し,Con Aと結合し,ブルーセファロースに結合する糖蛋白である。上記分画中の各種サイトカインの挙動,抗血清添加実験,リコンビナント物質添加実験の成績から,この物質は既知のサイトカイン,IL-1,-2,-3,-4,-5,-6,TNF,γインターフェロンとは異なる新しい物質であると思われる。現在逆相カラムをも含め,各種カラムを用いて精製中であり,活性は検出し得るが,通常の測定系では蛋白としては検出困難なところまで精製をされており,大量材料からの精製品を得る予定である。この物質の作用を受ける細胞は抗原刺激を受けたT細胞であって,無刺激T細胞は反応しない。さらに,この物質に反応するT細胞亜集団は,1型ヘルパーT細胞及びCD8陽性細胞であって,2型ヘルパーT細胞には効果は見られない。このことは本因子が2型ヘルパーT細胞を除く広範囲のT細胞のIL-2受容体発現に関与していることを示している。フローサイトメトリーによる解析では,この因子はIL-2の存在下にIL-2受容体発現を増強する作用を発揮するもので,IL-2非存在下では効果は発揮されない。一方,IL-2は本因子非存在下でも,わずかに受容体発現を誘導する。しかし,この場合には発現される受容体はあくまで極めて低レベルである。すなわち,我々が発見した因子は,IL-2受容体発現増強因子と考えられる。
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