東南アジア暖帯林の動物相と種分化に関する研究(第二次)
Project/Area Number |
63043075
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Research Category |
Grant-in-Aid for Overseas Scientific Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | Field Research |
Research Institution | National Museum of Nature and Science,Tokyo |
Principal Investigator |
武田 正倫 国立科学博物館, 動物研究部, 室長 (20000143)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諸喜田 茂充 琉球大学, 理学部, 助教授 (50045027)
山崎 柄根 東京都立大学, 理学部, 助教授 (90008714)
小野 展嗣 国立科学博物館, 動物研究部, 研究官 (50167326)
大和田 守 国立科学博物館, 動物研究部, 主任研究官 (40113419)
吉行 瑞子 国立科学博物館, 動物研究部, 主任研究官 (80100824)
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Project Period (FY) |
1988
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1988)
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Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 1988: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
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Keywords | 動物相 / 種分化 / 暖帯林 / タイ / マレーシア |
Research Abstract |
東南アジアには、地域による気候の違いや地形の変化を反映する暖帯林が隔離的に分布しており、そこに生息する動物も周囲の熱帯林とは異なる独特の動物相を形成していることが予想される。本研究は、各地の暖帯林の動物相を調査し、それぞれの特異性を比較分析することによって、種分化の実態を解明することを目的として計画された。昭和60年度にすでに、フィルピン各地で鳥類、昆虫類、蛛形類、十脚甲殻類についての現地調査が行なわれ、フィリピン産の動物の分化について、例えば鳥類においては山地の隔離よりもむしろ島による隔離の方が要因としてより強く働いていること、昆虫類や土壌性ダニ類においては山岳地帯における分化が著しいことが示された。 本研究は種分化の実態を知るために第2次調査で、昭和62年にマレーシアおよびタイ国において小型哺乳類、昆虫類、蛛形類、十脚甲殻類の現地調査が行なわれた。得られた資料は研究のための標本化がほぼ終了し、研究が完了したグループから論文として発表されつつある。現在なお研究が進行中の動物グループもあるが、以下に成果の概要を記す。 小型哺乳類は、マレーシアおよびタイ国各地で総計50種を越える種の標本を多数採集した。日本産種の研究のための貴重な資料であるが、タイ国内での種分化に関しても興味ある結果が得られそうである。第1報としてモグラEuroscaptor klossi(Thomas)の骨格を研究し、分類学的に独立の種として認められることを示した。 クモ類は造網性、徘徊性、地中性とも多くの標本を各地で採集し、現在、同定作業が進められている。種分化の観点から最も興味深いグループがハラフシグモ類である。腹部に体節性を残していることからクモ類として最も原始的と考えられるが、今回の調査で得られた標本を研究したところ、タイ国北西部から2新種、南部から3新種が発見され、狭い地域で分化が起こっていることが明らかとなった。 昆虫類は採集された個体数、種数とも膨大で、分類群も多岐にわたっている。とくに研究が進められたのは森林性のシャクガ科およびアオカレハ属のガ類で、第1次調査で得られたフィリピン産の標本とともに論文が発表された。その最も注目される結果はシャクガ科においてルソン島北部山岳地帯と台湾山地との関係の指摘されたことである。また、フィリピン諸島のアオカレハ属の続報においては、各島で種分化や亜種の分化が起きていることが示され、また、タイ国のアオカレハ属を扱った論文では、スンダランド中心に分化したこの属の種が、タイ国にも少なからず分布していることが明らかにされた。 甲虫類では、フィリピン・ルソン島中部の孤立した山地に生息するチビゴミムシの研究が完了した。近縁種との形態および分布を考察し、タイ国南部のものとの関係を示した上で、大陸から直接由来したものであることが示された。また、タイ国産のケシゲンゴロウ属は従来2種が知られていたが、今回の調査で1新記録種、1新種が追加された。 十脚甲殻類は第1次調査のフィリピン、とくにパラワン島との関連から東マレーシア・サバ州の調査を行なった。両地域にサワガニ類の共通種は分布していないが、属は共通であることから、パラワン島はフィリピンの主要な島々とは地誌的に異なることが示唆された。また、マレー半島をマレーシア側から北上し、さらに、タイ国側から南下してほぼ全域にわたってサワガニ類とテナガエビ類、ヌマエビ類の調査を行なった。季節の関係で多数の抱卵雌を採集することができたため、簡単な飼育装置を考案して幼生を得た。その結果、成体の形態が互いに酷似していても、幼生の形態が異なっていたり幼生期間が短縮されていたりする、すなわち、別種として分化していることがあるという事実が判明した。とくにザラテテナガエビMacrobrachium australe(Guerin Meneville)に近似の4種が識別され、第1報として1新種、第2報として期間が短縮された幼生の記載を行なった。その他、大卵を少数もつヌマエビが数種採集された。これは河川に陸封された結果で、生息環境を詳細に分析することにより、陸封されたことによる甲殻類の環境適応および繁殖戦略に関する一般理論を提唱することが可能である。
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Report
(1 results)
Research Products
(18 results)