熱帯性山地林におけるゴリラ、チンパンジー及び他種霊長類間の種間関係に関する総合研究
Project/Area Number |
63043081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Overseas Scientific Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | Field Research |
Research Institution | Japan Monkey Centre |
Principal Investigator |
宮藤 浩子 日本モンキーセンター, 研究員 (10205099)
山極 寿一 (財)日本モンキーセンター, 研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
EKAM Wina ザィール国科学省, マバリ研究所, 所長
湯本 貴和 神戸大学, 教養部, 助手
浜田 穣 岡山理科大学, 教養部, 講師 (40172978)
丸橋 珠樹 武蔵大学, 人文学部, 助教授 (20190564)
山極 寿一 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (60166600)
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Project Period (FY) |
1987 – 1988
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1988)
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Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 1988: ¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
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Keywords | 霊長類 / ゴリラ / チンパンジー / 生態学 / 種間関係 / 総合研究 / ザィール |
Research Abstract |
本研究は、アフリカ大陸の標高の異なるいくつかの熱帯性山地林で同所的に生息する霊長類間の共存様式、及び種間関係を分析することを目的として昭和62年度に開始された総合研究である。本年度はそのまとめの年にあたり、1)研究分担者の浜田穣が、昭和62年度の現地調査でザィール国に残置してきた形態資料の整理、補足資料の収集、2)ベルギー国中央アフリカ博物館にて収集資料の同定ならびに比較資料の収集を行なうとともに、3)ザィール国科学省でバリ研究所のエカム・ウィナ所長を1カ月日本へ招聘し、調査資料の整理と分析を実施した。また、研究代表者と分担者が犬山と京都で計4回にわたって総括会議を開き調査資料を分析した結果、以下の成果が得られた。 1.ザィール東部の熱帯多雨林には計17種の昼行性霊長類が生息している。これらの霊長類の分布様式から、a)大きな河川、b)山地林が分布の制限要因となる分類群、c)これらが障壁とならない分類群に分けることができ第4紀における霊長類のこの地域への侵入時期の新旧の相違を推測することができた。 2.ザィール東部のキブ州には計10種の昼行性霊長類が生息しており、低地林から山地林へ移行するにしたがい種数は漸次減少する。このうち、ヒヒ類は低地林から山地林へ、フクロウグエノンは山地林から低地林へと近年分布域を拡大し、黒白コロブスやロエスティグエノンはこの地域で絶滅の危機に瀕していることが判明した。 3.ゴリラとチンパンジーはキブ州の低地林から山地林まで広範に同所的に共存していて、とくに古い二次林や河辺林を頻繁に重複利用し、同種の食物を摂取して暮らしている。両種は調査を実施した2地域ではほぼ同密度で生息しているが、非共存域の密度に比べるといずれも低密度で、両種が土地や食物の利用をめぐって競合関係にあると推測された。また西アフリカにおける両種の共存域の資料と比較検討した結果、両種は低地林で多種の果実を重複利用しているが、ゴリラは1年を通じてより安定した食物供給源である草本を主要食物としており、これらを基本食物として第4紀に低地ー山地林一帯へ分布域を拡大したことが示唆された。 4.標高の異なる2つの山地林でゴリラの生態・社会学的特徴を比較検討した結果、植生の違いに由来する食物の量と分布様式の相違によって、両地域のゴリラの生息密度、遊動域の広さ、食性、集団間の出会いの頻度に顕著な差が認められ、これらの要因が両地域の集団間関係の相違を産みだしていることが示唆された。しかし、社会構造や集団間の個体の移動様式、個体が示す社会行動には両地域間に差はみられず、両地域のゴリラが環境条件の違いに対応した独自の社会・行動様式を獲得するに至っていないことが示された。また、この結果からザィール東部に生息するゴリラは、比較的新しい時代に高山地帯から低地へ生息域を広げたことがより確かとなった。 5.調査地域に同所的に生息していることが確認された9種の霊長類は、共通に利用する5種の果実以外はそれぞれ異なる果実を採食している。また体構造や歯冠の計測から、各種霊長類は異なる体のサイズと食性に基づいて森林内にすみ分けていることが示唆され、採食生態と体構造からみた霊長類の種間関係の一側面を明らかにすることができた。 6.低地林でも山地林でもグエノン、コロブス、マンガベイ類はよく異種の霊長類から成る混群をつくることが本研究で明らかになった。このうち低地林ではアカコロブス、モナモンキー、アカオザルがよく混群をつくり、これらの混群を構成する各種の群れは、単一の種から成る群れよりも個体の移出入が頻繁であることが示唆された。 これらの研究成果は、昭和63年度に開催された第25回日本アフリカ学会大会、第4回日本霊長類学会大会、第7回日本動物行動学会大会、第12回国際霊長類学会大会で発表された。また、現在印刷中の英文報告書はザィール、ルワンダ両国の政府や関係各機関に配布され、今後の霊長類に関する保護・研究、および国立公園運営に役立てていただく所存である。
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Report
(1 results)
Research Products
(12 results)