Project/Area Number |
63510229
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
考古学(含先史学)
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
小林 健一 奈良国立文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部, 主任研究官 (70110088)
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Project Period (FY) |
1988
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1988)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1988: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 鏃の重量 / 丸木弓 / 歩兵と騎兵 |
Research Abstract |
古代における全形を知りうる弓の資料は、正倉院に残るような例を除けば、きわめて少ない。古墳時代のばあい、長さ2m前後と1.3m前後の長短2種があり、いずれも一木を削り出してつくったもので、現在の弓と較べて、"強い弓"といえる。矢についても、弓で射ることが可能ならば、重いほど威力がある。従って、鉄鏃にも、かなりの重さを示すものがある。鉄鏃の形態は、大きく平根式、類銅鏃式・柳葉系、細根式、長頚鏃にわけられる。鏃身の形は、前3者が比較的幅広く扁平で、傷口を大きくする目的でつくられているのに対し、後2者は細く尖っており、深く突き刺さることを目的としている。前3者は4世紀から5世紀前半までの主流であり、後2者は5世紀中葉から出現する。重さについては特に柳葉系に顕著であるが、次第に大形化し重量が増す。5世紀中頃には、50gr前後のものまである。一方、細根式・長頚鏃の重さは10〜25gr前後に集中する。鉄鏃の形態・重量の変化は、防禦具である甲冑の変化と対応する。5世紀中葉、草綴甲冑から鏃留甲冑へと変化し、加えて従来から騎兵用とされている掻甲が出現する。また、矢を携帯する容器にも、それまでの背に負う靭のほかに、腰からさげる胡〓が新たに加わる。さらに、矛が出現し、槍にとってかわる。このような武器の変化はまさに、歩兵戦から騎兵戦へと戦闘の変化を物語るかのようにみえる。ところが、馬具についてみると、5世紀代のものは、すべて飾り馬用のものとみられ、騎兵に適したより実用本位の馬具の出現は、6世紀をまたねばならない。加えて、高句麗の壁面、韓国の古墳出土例にみられるような、馬甲、馬冑をそなえた重装騎兵は、大谷古墳出土例を唯一の例外として、その普及を我国で確かめることができない。我国のばあい、本来騎兵用である武装を、在来の武装の延長線上で、歩兵用の新しい武装として、まず受容したのである。
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