異常原子価を示すハロゲン化金属塩を電子受容体とする電荷移動錯体結晶の電子構造
Project/Area Number |
63540334
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
物理化学一般
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 政志 名古屋大学, 教養部, 教授 (70022639)
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Project Period (FY) |
1988
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1988)
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Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 1988: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Keywords | 異常原子価 / 電荷移動錯体 / (BEDTーTTF)_4Ni(CN)_4 |
Research Abstract |
(BEDTーTTF)_4Ni(CN)_4の単結晶を電解法にて合成し、その結晶構造を解析し、更に電気伝導度とESRスペクトルの温度変化を測定した。結晶構造はBEDTーTTF分子が〔101〕軸方向に4枚周期で重ね合った配置をしており、分子の長軸はほぼac面に垂直である。この結晶のa軸方向の電気伝導度は室温で約20Scm^<-1>で、室温から230Kまでは金属的な挙動を示し、その後相転移を経て、160K以下では半導体的な振舞いをする。ESRはBEDTーTTFカチオンラジカルによるシグナルの他に、Ni(III)イオンによると思われるシグナルが観測された。共にg値はac面に垂直方向で最大となり、その大きさはg=2.013と、g=2.056であった。ESR吸収強度の積分値より各シグナルに対する化学種の帯磁率の温度変化を求め、又室温での帯磁率の絶対強度を静的帯磁率の測定から決定した。その結果、BEDTーTTFラジカルは室温付近で金属的で160K以下では2量体による絶縁体構造をとることがわかった。Tightbinding近似によるTransfer積分を一次元系におけるPauli常磁性項から見積るとt=0.016であった。 Ni(III)イオンによるシグナルはキューリー則に従い、この式を用いてNi(III)イオン濃度を求めると全Niイオン中、約1%が3価になっていることがわかった。このNi(III)イオンは、一般には室温で不安定であるが、このBEDTーTTF錯体結晶中では非常に安定である。これはBEDTーTTF分子が不安定イオンを安定化させる何か要因を持つためと考えられ、先に(BEDTーTTF)_2CuCl_2錯体においても同様なことを我々は経験している。更に、この(BEDTーTTF)_4Ni(CN)_4錯体のESCAスペクトルを測定し、NiイオンのほとんどがNi(II)であることを確認した。この結晶は、超伝導を示した(BEDTーTTF)_2Cu(CN)_2と類似の結晶構造をしており、物性的にも興味がもたれる化合物であった。
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Report
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Research Products
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