Project/Area Number |
63570857
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Morphological basic dentistry
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
牛山 順司 日本歯科大学, 新潟歯学部, 教授 (40120620)
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Project Period (FY) |
1988
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1988)
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Keywords | 象牙質知覚 / 象牙芽細胞 / 膜電位 / スライス標本 / 動水説 / 色素結合 / ギャップ結合 |
Research Abstract |
最近の態学的研究に拠れば、象牙芽細胞の隣接部には多数のギャップ結合が存在するという。ギャップ結合は一般にイオンや低分子物質が通過できる細胞間通路として知られている。この研究は、一つの象牙芽細胞に注入した蛍光色素が、実際に隣の細胞に伝わるか否かを知るために行なった。猫の犬歯をダイヤモンド・ブレイドで輪切りとし、厚さ約0.6mmのスライスを作り、これをクレイブス液で灌流することで、歯髄細胞を長く生かすことができた。また、この標本では、微少電極を歯髄切断面から象牙芽細胞に容易に刺すことができ、極めて安定した膜電位(-60mV)を記録することができた。蛍光色素(ルシファー・イエロー)を詰めた微少電極で膜電位を記録しながら、電極にマイナス電位をかけ、色素を電気泳動により、細胞内に導入した後、スライスをホルマリンで固定し、アルコール脱水、更に透明標本とし、色素の拡散の有無を蛍光顕微鏡で調べた。その結果、ルシファー・イエローは、隣接した多数の象牙芽細胞に極めて容易に移行することが解った。 この研究での発見(水分子やイオンは自由に象牙芽細胞間を移動し得ること)は歯痛に関して深い関わりを持つものと思われる。例えば、刺激により歯細管内の液体に動きが生じ、これにより神経末端に変形が起るとする『動水説』に於て、歯髄神経を興奮させるためには多数の歯細管内の液体が急激に動かねばならない。何故ならば、局部的に動いた水はギャップ結合を通じ歯髄全体の象牙芽細胞に移動し、特定の細胞に著明な体積変化が起り難いと思われるからである。同じく、象牙芽細胞を感覚受容器とする『象牙芽細胞説』に於ても局部に生じた受容電位はギャップ結合を通じ、多くの象牙芽細胞に広まるであろう。 若し、象牙芽細胞の膜抵抗が十分高いとするならば、電位の降下は僅かで、従って、多くの神経末端が刺激されることとなる。
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