今回の研究の動機は、我が教室で行ってきた膵島移植が移植直後には比較的良好な血糖コントロールができているにもかかわらず年数と共に移植膵島の機能低下の為再びインスリン依存の生活に戻ってしまうという哀しい事実からである。これらの問題解決のため、「血行再建を行う臓器移植と異なり、細胞(塊)移植である膵島移植では、移植後の組織への血流・血管再構築がその長期生存に必須であるはずである」という立場から、移植組織(細胞塊)への微小血管再構築のメカニズムを明らかにすることを目的とした。(当初は19年度初頭より実験を開始する予定であったが申請者が膵移植研修のため海外出張のため実験の開始時期が大幅に遅れた。) 実験計画書ではヌードラットを用いる予定であったが、当初マウスには径門脈的な膵島移植は困難であると判断した為である。しかしながら更なる文献検索にてマウスへの膵島移植が可能であるという文献(A new mouse model for intraportal islet transplantation with limited hepatic lobe as a graft site.Transplantation.2006 Sep 15;82(5):712-5.)を見つけた。これは同一固体で異なる葉に移植できるという(ネガティブコントロールがとれる)という利点もあり、この手法を採用した。まずは手技的な訓練を数日間行った後に、インク注入にて葉別に注入されることを確認した。この際原著と異なり血管クリップを使用した。操作の簡便化により短時間で注入、再還流ができるからである。これらの操作で移植肝に形態的な変化が見られないかどうかも同時に調べた。現在膵島分離を行い膵島移植を行ったマウスの作成中であり、これら移植マウスを経時的に犠死せしめ、移植膵島の形態的な変化を血管新生を主眼に観察してゆく予定である。
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