Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
動物は特定の臭いや味に対して嗜好性を示すが、このような先天的な嗜好性は、しばしば発生にともない変化することが知られている。たとえば、ショウジョウバエ幼虫はアルコール類に対してほとんど嗜好性を示さないが、変態を経て成虫になると、アルコールに対して強い誘引性を示す。このような発生に伴う嗜好性変化はさまざまな動物種において観察されているが、その神経基盤はほとんど理解されていない。本研究では、ショウジョウバエ幼虫の嗜好性変化をモデルとして、その神経基盤の解明を目指した。まず、3齢幼虫(発生96時間)と蛹化直前幼虫(発生120時間)の嗅覚嗜好性を比較し、46個の化学物質のうち8個に対して嗜好性が変化することを見出した。特にプロピオン酸に対して、3齢幼虫は非常に強い誘引行動を示すのに対して、蛹化直前幼虫はほとんど興味を示さないようになった。この嗜好性スイッチに必要なニューロンの同定を行い、脳片半球あたり2個のニューロンのみが必要であることを見出した。さらにこの2個のニューロンはドーパミン作動性ニューロンであること、感覚情報の情報処理中枢であるキノコ体に投射することを明らかにした。ショウジョウバエのドーパミン受容体の1つDopEcR変異体では嗜好性スイッチが置きにくいこと、逆にドーパミン受容体DopEcRをキノコ体に高発現させると、3齢幼虫において嗜好性スイッチが起きる(プロピオン酸に対して誘引されなくなる)ことを示した。以上の結果から、ショウジョウバエ幼虫の先天的な嗜好性をスイッチさせるメカニズムとして、キノコ体におけるドーパミンシグナルを同定することに成功した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Developmental Neurobiology
Volume: 77 Issue: 4 Pages: 1-13
10.1002/dneu.22428