Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
アルツハイマー病(AD)は、神経細胞の異常活動が起こり、異常タンパク質が蓄積し、回路の破綻が起き認知症に至ると考えられている。ADの患者は初期症状として空間記憶障害を引き起こす。海馬はその空間記憶に重要な役割を果たすが、病態の進行により海馬機能回路がどのように破綻していくかはわかっていない。本研究では、その機能回路破綻過程を詳しく知るために、アミロイド前駆体を過剰発現させずにβ-アミロイドの蓄積を生じる次世代型ADモデルマウス(AppNL-G-F )の海馬CA1領域に蛍光カルシウムセンサータンパク質G-CaMP7と赤色蛍光タンパク質DsRed2を共発現するトランスジェニックマウスを作成し、仮想現実直線路を探索するマウスのCA1領域の約650個からなる細胞の活動を、二光子カルシウムイメージング法で4・7ヶ月と同一個体で観察した。4ヶ月齢では、異常な活動を示す細胞はなく、場所細胞の数と安定性はコントロールマウスと差がなかった。しかし、7ヶ月齢になると、場所細胞の数や安定性は減少し、走行中に過剰活動を示す細胞や観察期間中に絶え間なく活動する細胞も観察されるようになった。一方、このモデルマウスのCA1の上昇層でG-CaMP7とDsRed2の蛍光画像で凝集体が観察された。この凝集体は、免疫染色によりアミロイド斑と一部重なり、老化とともに増大し数も増加した。また、3ヶ月齢ですでに出現しており、アミロイド班の出現とほぼ同時期であることから、アミロイド斑の指標になる。したがって、従来のAPPを過剰発現させた非生理的なADモデルマウスの結果とは異なり、使用したADモデルマウスでは、凝集体拡大が見られたのち場所細胞を含む機能的回路破綻が起こる。この神経機能回路破綻過程は、アルツハイマー病の分子ターゲットや薬物などの研究や治療戦略に応用でき、新たな治療法の開発へ結びつくことが期待される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochemistry and Biophysics Reports
Volume: 10 Pages: 145-151
10.1016/j.bbrep.2017.03.006