Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
強磁場中の2次元電子系は量子ホール効果をはじめとした多くの興味深い現象発現の舞台である。この強磁場が空間的に激しく変化する状況での電気伝導を調べる目的で実験を行った。実験方法は以下の通りである。銅箔上CVD単層グラフェンにネガ型レジストSU-8膜をコートした後、銅箔を塩化第2鉄溶液でエッチング除去し、純水洗浄の後、フッ素系細い糸を用いた水中操作でグラフェンが表側になるように折り曲げ、その両面の合計18箇所に電極を取り付けた。前年度終了時点で問題であった折り畳みグラフェンの両面への配線については、穴あきガラス基板に転写した後、開口部において銀ペーストを用いて金線を接続するという方法が有効であった。この折り畳みグラフェン試料を4.2Kに冷却し、8.5Tまでの磁場を加えて伝導測定を行った。このとき,折り畳まれた上側のグラフェンと下側のグラフェンでは表裏が入れ替わるため、電子の軌道運動に対する実効的な磁場は反転することになる。実験では約5μmで8.5Tから-8.5Tに磁場が反転する極めて急峻な空間変化を実効的に実現できた。表面と裏面では期待通り逆符号のホール電圧が観測された。表面・裏面間の抵抗は特有な磁場変化を示すが、数値シミュレーションを行いそれらは有効磁場の反転によって半定量的に理解できることがわかった。残念ながら今回の実験条件では量子ホール効果の観測には至らなかった。伝導は正孔型でキャリア密度は2x10^16m^2、移動度は0.1m^2/Vsであり、試料の質、特にキャリア密度の制御が重要である。また磁場反転部の界面量子状態を調べるには格段に薄いスペーサーをもつ折り曲げの実現が必要である。最近の報告によればグラフェンの折り曲げ曲率はかなり小さくできるとされており、実現の可能性はある。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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