Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
向社会行動は、外的な報酬を求めずに、自分が労力を費やし、他者に利益を与える行動である。これまで、向社会行動をとる個体は、ヒトやチンパンジーだけであると考えられてきた。しかし最近、社会性があり家族全員で子育てをおこなうことが知られている小型霊長類のコモン・マーモセットも、レバーを引いても自分は報酬を得られないが、他者に報酬を与えることができるという向社会行動課題をおこなうことが明らかにされた。本研究では、コモン・マーモセットが向社会行動をおこなっている際の大脳新皮質での神経活動を解明することを目指す。本申請者は、これまでの研究で2光子励起顕微鏡下、麻酔下、単一細胞レベルで多細胞の神経活動を長期間リアルタイムに観察する系を確立した。これらの系を用いて、課題実行時にin vivo 2光子カルシウムイメージングをおこなうためには、2光子励起顕微鏡下、頭部と胴体を固定した状態で、課題をおこなわせる必要がある。2光子励起顕微鏡下でイメージングをおこなうためには、マーモセットの頭部と胴体を固定した状態で向社会行動課題をおこなわせる必要がある。従来のアクリル板による固定方法では、マーモセットがストレスを感じて行動課題をおこなわない。このため本申請者は、これまで用いられていた頭部と胴体を固定する装置の胴体部分を改良し、ストレスを低減させるためにジャケットを着させて胴体を拘束する方法に変更した。これにより、頭部と胴体を固定した状態のマーモセットに、手を使ってレバーを引くと液体報酬を得ることができる「レバー引き報酬課題」をおこなわせることに成功した。さらに、課題実行時にin vivo 2光子カルシウムイメージングをおこなうことにも成功した。また、レバーを引くことによって、他者に報酬を与えることができる「レバー引き向社会行動課題」を構築し、マーモセットが利他行動をとることを明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。