Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
大脳皮質視覚野のオシラトリーな神経活動は、視覚情報処理に重要であることが古くから報告されている。これまでに我々は、視覚野ニューロンの視覚反応の同期性とその発達機構を明らかにする目的で、様々な発達段階のラットや発達期の視覚体験を遮断したラットを対象に、その一次視覚野の複数の神経細胞から同時に多点シリコンプローブを用いてスパイク活動を記録した。2-4層内あるいは5-6層内の細胞ペアの視覚反応の同期性を相互相関解析法により定量した。その結果、開眼時には同期的活動はほとんど生じないが、成熟すると2‐4層、5-6層共に、視覚反応が類似した細胞群に高い割合で強い同期発火が観察された。本年度は、どのような視覚刺激特徴が同期性に重要であるかを詳細に解析。その結果、2-4層では最適空間周波数と最適方位が双方とも類似した細胞ペアに強い同期発火が見出された。一方、5-6層においては、最適空間周波数が類似した細胞ペアは同期発火を示したが、最適方位の類似度は同期発火の強弱とは関連がなかった。さらに、2-4層の最適な方位・空間周波数の類似度に依存した同期発火は生後の視覚体験に依存して形成されたが、5‐6層における最適空間周波数が類似したペアの同期発火は視覚体験の有無にかかわらず形成された。これらの結果は、オシラトリーな神経活動に関与する同期発火の特性と発達機構は、層ごとに異なることを示している。2/3層錐体細胞はその同期的活動により投射先である高次視覚野へ詳細な視覚刺激特徴を伝達し、皮質下へ投射する5-6層細胞は大まかな視覚情報を伝えることが示唆された。今後は上記の結果を踏まえて、一次視覚野内のみならず、領野間での神経活動同期性の解析を行う予定である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。