Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
一般的に生命は、約40億年前に、熱水環境下においてRNAゲノムを有した形で誕生したと考えられている(RNAワールド仮説)。RNA分子が、C1化合物を起点に非生物的化学進化により誕生したことを示唆する化学実験的データも、これを支持するものである。しかしながら、全ての現生細胞性生物においてゲノム分子として利用されているDNA分子の起源については、解明されておらず、生命誕生ならびにその原始進化を解明する上での大いなるミッシングリンクとなっている。昨今、RNAワールド時代においてDNA分子を最初に発明したのはウイルスである、という説が提唱されている。現生生物では唯一ウイルスがDNA以外にRNAもゲノム分子として利用しているが、一部DNAウイルス(ファージ含む)においては、通常のATGCとは異なる独自の塩基を有するものも見つかっていることがこの説の根拠の一つとなっている。本研究では原始生命との強い関連が示唆される熱水系に生息する好熱菌を宿主とするウイルスのゲノム構成を、分子レベルで解析し、異形DNAの探索を行うものである。80℃以上で増殖する超好熱古細菌を宿主とするウイルスは、同じ原核生物である細菌ウイルス(ファージ)とはその形状やゲノム配列等が大きく異なり独自のウイルス叢を構成していることが近年明らかとなっている。しかしながらこれまでこれら超好熱古細菌ウイルスのゲノムDNAの塩基組成を解析した研究は皆無であった。本研究では、まず超好熱菌を培養しそのゲノムDNAを抽出、酵素処理によりヌクレオシドレベルに分解し、NMR法と質量分析法によりその構成塩基組成を解析する。初年度である本年度は、超好熱古細菌3株、ウイルス3株を解析に供し、それぞれの塩基組成を同定するに至った。その結果、これまでに解析に供した試料においては全て通常のATGC型DNAであることが明らかとなった。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
初年度である本年度は、DNA分子の分解とその組成の解析・検出を主として行った。本研究を行う上で必須となる詳細な分子組成解析を行うに十分な実験手法は確立された。また、ゲノムDNAの抽出法の違いにより、解析結果に差異が出ることも明らかとなったことは、今後の実験を行う上で重要な知見である。一方、本研究を遂行する上で最も課題となるのが、解析に十分なDNA量を精製するためのウイルスの大量培養である。本研究開始時点において本実験を行うのに十分な量を培養できるウイルスは僅か3株であった。そのため新たなウイルスの単離も試みており、これにおいては非常に良好な結果が出ている。
上述の通り、本研究を行う上で最も重要となるのが、超好熱古細菌ウイルスの大量培養である。昨年度においては十分量培養ができる手元のウイルス株は3株のみであったが、新たに超好熱古細菌ウイルスの培養を試みたところ、大量培養できる株が複数株得られたため、今後それらの解析を行う。中でもそのうちの1株は、超好熱古細菌において非常に稀有な一本鎖DNAウイルスであることを示唆するデータが得られている。一般的に一本鎖DNAは高熱に弱いため、その熱安定機構の解析とともに、その塩基組成は非常に興味深いものである。さらに、より多くのウイルス株を解析に供するため、古細菌ウイルスの研究を行っている海外の研究者にも共同研究による試料の提供を要請しており、協力の約束を取り付けているため、今後それらを用いた解析も行う予定である。
All 2018 2017 Other
All Int'l Joint Research (2 results) Journal Article (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Invited: 1 results)
Astrobiology
Volume: 18 Issue: 2 Pages: 207-223
10.1089/ast.2017.1649