Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
空間反転対称性の破れた磁性体では、複数の対称性の破れにより、固体特有の電気と磁気の相関(電気磁気効果)が生じる。この相関は、時間的に振動する電磁場である電磁波と物質の相互作用においても、光学的電気磁気効果として発現することが、近年の研究を通して見出されてきた。本研究では、微視的なメカニズムに関する知見をもとに、キラル磁性体における光学的電気磁気効果である、磁気キラル二色性(MChD)に関して、物質設計の観点から、可視光領域における巨大効果の実現を目指した。微視的な観点からは、MChDは電気双極子(E1)遷移と磁気双極子(M1)遷移の干渉効果として理解されており、両者の強さが同程度の時に効果が最大となる。そこでまず、両者の強度を近付けることを物質設計指針とした。しかし大半の光学遷移では、遷移強度の関係が、|E1|>>|M1|となってしまう。そこで本研究では、反転心のある場合にE1禁制となるf-f遷移に着目し、キラル希土類錯体での物質開発に取り組んだ。この際、希土類元素周りのジオメトリーがE1禁制の緩和の大きさに影響することにも着目し、等方的な配位構造を持つ錯体を合成し、局所的対称性の破れを抑制した。また希土類元素のJ多重項のうち、時間反転操作により結び付けられる状態からのMChD信号同士は互いに打ち消し合う関係にあることが示される。その為、磁場印加によるゼーマン分裂により、二つの状態間の占有分布に偏りを生じさせなければ、信号は相殺されてしまい、MChDは観測出来ない。そこで本研究では、比較的大きなJの値を持ち、大きなゼーマン分裂が期待されるTb錯体を候補物質とした。上記の物質設計指針に基づいて合成したキラルTb錯体においてMChDの観測を試みたところ、500-600nmの可視光領域のf-f遷移発光において、従来の報告値の約65倍に相当する強いMChDの実現に成功した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (8 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Invited: 2 results)
Physical Review Materials
Volume: 印刷中
Chemistry of Materials
Volume: 29 Issue: 23 Pages: 10053-10059
10.1021/acs.chemmater.7b03691