Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究では、ソーレー効果を応用した液体中の溶質分子の非接触輸送方法として、独自に考案した「サーマル分子ピンセット」の技術を、光圧を用いた光ピンセット技術と融合することで、新規の分子操作技術を創出することを目的として開発を進めた。2018年度は、まず昨年度の課題であった加熱用レーザーの出力ファイバーのコア径が大きいことによる集光性の悪化を、コア径が10um以下のシングルモードファイバー出力のレーザーの導入によって克服した。また回折光学素子(DOE)の導入により、サーマル分子トラップ技術に必要な楔形のレーザパターンを形成するためのコンパクトな光学系を構築した。DOEの採用によって、光ピンセットを主目的とする光学系に、付加的にサーマル分子ピンセットの光学系を設置することが容易に実現できるようになった。完成したシステムを用いて、蛍光ビーズを非接触操作する実験を行い、楔形の温度分布にトラップされた粒子の移動を実証した。ただ、数umの粒子の移動を実現するのに加熱から移動までに数十秒程度必要であり、操作感として速度を向上する必要があることが見いだされた。代表者のこれまでの研究で、ソーレー効果によるトラップ効果は、ソーレー効果による移流の速度と加熱パターンの移動速度が等しいときに最も効率的であることがわかっているが、移動速度が想定よりも遅かったのは、形成された温度分布が小さかったことが原因と考えられる。試料のレーザー光の吸収係数と試料セルの厚みやセルの材料などを再検討し、熱拡散による温度分布の低下を解消することで最適化が可能であり、実用的に十分な数十um/秒程度の移動速度を実現することも十分可能であると考えられる。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。