Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
複雑な随意運動制御を脳が効率的に行うために、複数の筋がグループを形成し同時に支配される、すなわちシナジーを形成することにより自由度を減少させているという考え方が古くから唱えられ、近年、工学的手法により、動物やヒトにおいてその存在が示されるようになった。しかしながらそれが、実際に脳内のどのような神経結合によって実現されているのかを示した生物学的データは少ない。本研究は、身体の平衡に深く関与する前庭脊髄反射系において、筋シナジー形成の中枢神経機構の実体を明らかにした。頭部に回転刺激が加わり、ある半規管が刺激されると、与えられた回転とは正反対の方向に頭部が回転し,元の頭の位置に立ち直る前庭頚反射が起こる。この際、刺激された半規管からの情報が、特定の頚筋群に伝えられる必要がある。これらの筋群は一つの「シナジー」を形成しているといえる。我々は前庭頚反射においては、前庭神経核と頚筋の運動細胞をつなぐ前庭脊髄路細胞のそれぞれが多数に枝分かれし、多数の筋を同時に支配していることが筋シナジーの形成機構において重要な役割を果たしていると考え、本研究においてそれを証明した。まずそれぞれの頚筋の運動細胞について、左右6個の半規管からどのような入力があるか、すなわち各頚筋の側からみた6個の半規管からの入力の収束様式を明らかにした。この解析を様々な頚筋について行うことにより、ある半規管が出力を及ぼす頚筋群の組み合わせが判明した。そこで次に、水平半規管からの入力を伝える前庭脊髄路細胞に注目し、その細胞内に神経標識物質を注入してその形態を可視化し、脊髄における分枝パターンを解析したところ、多数の頚筋の運動神経核を同時に支配していることが明らかとなった。これにより前庭脊髄路細胞の単一細胞レベルの形態学的な特性が筋シナジー形成に大きく寄与していることが明らかとなった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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