Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
連星中性子星の合体は、重力波源であると共にrプロセス元素の主要な供給源であると考えられる。そして、cosmic-ray中のrプロセス元素成分にとっても主要な起源である可能性が考えられる。我々はこれまでの研究において、中性子星合体起源の超重元素宇宙線(NSM-UHCR)の拡散および減衰のプロセス考慮し、太陽系におけるNSM-UHCRの強度の推定を初めておこなった。この研究で、NSM-UHCRは伝播過程において主に核破砕により大幅な減衰を受け、通常の宇宙線観測では受からない可能性が高いことを示した。ただし、過去に太陽系近傍で中性子星合体があった場合、一時的にNSM-UHCR強度は極めて強くなり、その痕跡がある種の石鉄隕石(パラサイト)中に記録されていると考えらえる。今後、様々な年齢のパラサイト隕石を測定しNSM-UHCR強度を推定できれば、過去の太陽系近傍での中性子星合体発生史を再現できる可能性がある。昨年のGW170817の観測により、新たに中性子星合体の発生率の推定が得られた。本研究ではこの数値を用いて改めてNSM-UHCR強度推定をおこなった。その結果、先の研究での推定より大幅に高いNSM-UHCR強度が予想され、衛星観測などの手法での宇宙線観測にもNSM-UHCRが影響する可能性があることが示された。また、NSM-UHCR強度の伝播環境への依存性も調べた。NSM-UHCRの核破砕による減衰率は、発生源から太陽系に到達するまでの通過物質量に指数関数的に依存する。そして通過物質量は伝播経路上の媒質密度と経路長の積に比例する。そのため、NSM-UHCR強度は星間媒質の密度と空間分布に敏感であり、媒質密度の値が先の研究で用いた値より2倍程度高ければ、NSM-UHCR強度は数桁も小さくなり、通常の宇宙線観測にはかからなくなると考えられる。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。