Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
生物は恐怖刺激に対して生存戦略の中で最も適切な行動・生理的反応を無意識に選択・実行する。この生理反応の中でも顕著な変化が認められる反応は、生命維持に必須である体温の変化である。しかし、恐怖刺激に対する体温調節を制御する神経回路網は明らかにされていない。本研究では、マウスにおいて恐怖刺激(恐怖刺激臭)の情報が傍小脳脚核―視床下核―孤束核へと伝達されることにより体温低下を引き起こすことを明らかにした。恐怖刺激により、傍小脳脚核の特定の神経細胞群が活性化される。この神経細胞群の活性化は、恐怖刺激臭に対して恐怖反応を示さないTrpa-1ノックアウトマウス(Trpa-1 KO)では認められなかった。恐怖刺激により活性化する傍小脳脚核の神経細胞群を特異的に刺激することにより、体温低下が誘発された。この傍小脳脚核の神経細胞群は視床下核に投射している。野生型マウスの視床下核は恐怖刺激により活性化するが、Trpa-1 KOではその活性化が認められなかった。視床下核へ投射する傍小脳脚核の恐怖刺激に対して活性化する神経細胞群の軸索末端を刺激することにより、体温低下が観察された。すなわち、恐怖刺激の情報は傍小脳脚核から視床下核へ伝達され、体温低下を引き起こすことが示唆された。孤束核は体温調節に関わる神経核の一つである。恐怖刺激によって活性化する視床下核の神経細胞群の一部が孤束核に投射していることを明らかにした。孤束核へ投射する視床下核の神経細胞群を刺激しすることにより、野生型マウスにおいて体温低下が誘発された。以上の結果から、マウスにおいて恐怖刺激情報が、傍小脳脚核―視床下核―孤束核へと伝達されることにより、生理反応として、体温低下が引き起こされることが明らかとなった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。