Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究の目標は、生体力学と情報科学を基盤に構築してきた摩擦音シミュレーターを用いて、人類がどのような状況となった時に摩擦音を構音するようになったかを考察することである。本研究では、まずチンパンジーや旧人類と現代人の顎形状の違いが解剖学的な制約となり、さらに空力音響学的に証明可能な構音メカニズムによる物理的条件を重ね合わせることによって、舌運動機能という前適応によって子音/s/や/sh/を含む音節が成立し得る条件を、まず標準的な顎形状に対して物理実験とシミュレーションで考察した。その結果、前歯部周辺の口腔形状の違いが/s/や/sh/構音時のメカニズムに影響することが分かった(Yoshinaga et al., 2019a)。「うすい」等の音節が調音結合した単語の発音時には、調音結合と子音と母音の遷移領域が存在する。我々は、音素の組み合わせには条件が存在し、その条件には物理的条件が存在すると考えた。特に構音の難度が高い摩擦子音を含む構音である「うすい」について、人工的に舌の挙上に要する時間を制御できる機械を構築した。その結果、流体力学的には音源領域における横渦から縦渦に遷移することが観察され、その遷移時間と摩擦音の特徴スペクトルが出現する時間に相関性がみられた。このことから、単に音素を結合させて単語の発生を推論するのではなく、物理的に妥当な音素の組み合わせを考慮することが推奨された(Yoshinaga et al., 2019b)。チンパンジーの下顎骨形状の比較を行い、ランドマーク法を用いて妥当な平均形状を生成した。[s]の音響特性を生成可能なチンパンジー構音モデルに対して空力音響実験と数値流体シミュレーションを行った結果、音源生成のメカニズムが人とは異なり、単に上顎と舌先端部とで狭窄を形成するだけでは[s]の構音は不可能であることが分かった(吉永ら, 2019)。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2019 2018 Other
All Int'l Joint Research (1 results) Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 1 results) Presentation (10 results) (of which Int'l Joint Research: 5 results)
The Journal of the Acoustical Society of America
Volume: 146 Issue: 2 Pages: 1239-1251
10.1121/1.5122793
PLOS ONE
Volume: 14 Issue: 10 Pages: e0223382-e0223382
10.1371/journal.pone.0223382