Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本申請課題の目的は、数理的な手法をもちいることで、パレオアジアDB の石器製作技術データの時空間動態を可視化し、データセットの様相を把握するとともに、その形成プロセスについても統計的・数理的に推定することである。多変量解析による情報の要約と、遺跡間の網羅的な比較を通じて、石器製作技術の地理的変異や、文化多様性の地域差を定量的に評価する。そうすることで、検討すべき仮説の提示を行い、その仮説の検証結果をさらにデータ解析に反映させる。これを繰り返すことで、プロジェクト全体のフィードバック関係を強化する。
本研究課題では、(1) 約13-2万年前のユーラシア大陸の広域にわたる石器製作技術のデータの定量的解析と、(2) 解析によって得られたパターンを生み出したプロセスの検討や方法論の妥当性を確認するためのシミュレーションをおこなった。(1)のデータ解析において、石器製作技術のデータ化には、Graham Clarkeが提唱し、John Sheaが拡張した石器製作技術の分類である「モード」を、さらにPaleoAsiaプロジェクトが拡張したものを用いている。453遺跡、895石器群を対象とし、あるモードが注目してる石器群に存在していれば1を、していなければ0をコードし、各石器群について01のベクトル配列を作成した。この配列の多様性を、多変量解析をもちいて定量化・可視化した。その結果、おおまかにではあるが、通時的に東西で石器製作技術が異なること、時間とともに、西アジアおよび北アジアに新しい技術が普及していくことが示唆された。少なくとも変化の一部は、現生人類の拡散と関連する可能性がある。この結果は、Quaternary International誌に掲載された。(2) のシミュレーションにおいては、世界地図を10度ずつに区切り、地理空間をメッシュに分割した。メッシュ上で、エージェントは出生・死亡、文化伝達、移住をおこなう。各メッシュは、対応する現実の空間の標高に応じて環境収容力が決まっており、適応的な新技術は、メッシュの環境収容力を上げると仮定した。一定時間シミュレーションを走らせた後、パレオアジアDBに収録されているのと同じ遺跡からサンプリングをおこない、現実のデータと比較した。現在、実際のデータに近いデータをシミュレーションによって生成することはできていないが、現実のデータが単なるサンプリングバイアスである可能性は低いという見通しを得ている。本研究課題の成果を含む、文化進化研究一般の数理モデルやデータ解析について扱った『文化進化の数理』を出版した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2022 2021 2020 2019
All Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 1 results) Presentation (13 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Invited: 1 results) Book (1 results)
考古学ジャーナル
Volume: 768 Pages: 123-127
Journal of Archaeological Science
Volume: 132 Pages: 105420-105420
10.1016/j.jas.2021.105420
Quaternary International
Volume: 596 Pages: 144-154
10.1016/j.quaint.2021.03.022