Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究は申請者が開発している自由エネルギー解析手法(一般化アンサンブル法)を用いて,GaNの結晶成長の全貌を明らかにしようとする萌芽的研究である.GaNは次世代の電力用半導体素子(パワーデバイス)として盛んに研究されており,これが実現されると著しい省エネルギー社会が到来すると期待されている.本研究で用いる手法は,従来の電子状態計算手法が苦手とする熱力学的・統計力学的観点を表に出したものである.したがって,本研究終了の暁には,実験と理論の橋渡し役として確立してきた計算物質科学の分野により強固な一面をもたらすことが期待される.
ニューラルネットワーク(NN)を応用した経験的ポテンシャルが近年注目を集めているが,出来上がったNNポテンシャルには汎用性がなくなってしまうことが度々ある.NNの外挿問題としてよく知られているこの問題を解決するため,物理的な情報を保持したNNポテンシャル(Physically Informed Neural Network Potential: PINNポテンシャル)の作製技術が新たに提唱されている.マルチカノニカル計算による自由エネルギー解析には,高速で安定な経験的ポテンシャルが必要不可欠である.そこで,多元素系に対応したPINNポテンシャルを新たに定式化・開発し,それをGaN結晶成長における原料ガスであるトリメチルガリウム分子に適用した.1500Kで実施した第一原理分子動力学計算から抜き出したデータを訓練データとして,PINNポテンシャルの学習を行った.全く訓練に用いていない500Kで精度の検証を行ったところ,エネルギー値と原子に働く力の両方とも,第一原理計算による値からのズレは非常に小さくなった.このPINNポテンシャルを用いて構造最適化を行ったところ,DFT計算からのズレは1%未満であった.さらに,分子動力学計算を行ったところ,エネルギー値や温度の時間発展の様子,さらには分子の運動に不自然な点は見つけられなかった.以上の計算結果から、静的な構造だけでなく動的な構造変化にも対応できる高精度なPINNポテンシャルが開発できたと考えられる.現在,以上の結果を論文にまとめている.今回,開発したPINNポテンシャルを用いてマルチカノニカル計算を行うには至らなかったが,うまく仕立てられた経験的ポテンシャルを用いることで,代表的な誘電体であるチタン酸バリウム中の酸素空孔の拡散現象の解析に成功した(論文投稿中).今後は両者を結合することで高精度な自由エネルギー解析を進めていく.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021 2020
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)
Journal of Applied Physics
Volume: 128 Issue: 12 Pages: 125301-125301
10.1063/5.0018855