Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究は、光合成において光エネルギー変換を担う光化学系IIの電子伝達反応につき、プロトン駆動力による制御機構の解明を目的とする。光化学系IIでは、プロトン濃度が低下すると第二キノンQBの酸化還元電位Emが低下することが考えられる。その結果、第一キノンQAとの電子授受平衡がQA側にシフトして反応が抑制され、電荷再結合が起こりやすくなることが想定される。本研究はこの電子伝達の制御機構を検証すべく、確立してきた光誘起FTIR差スペクトル法とFTIR分光電気化学法を用いて、QA・QB間における電子反応のpH依存性の解明、QB・QAのEmのpH依存性とその要因究明を行う。
本研究課題は、光合成において光エネルギー変換を担う光化学系IIの電子伝達反応につき、プロトン駆動力による制御機構の解明を目的とするものである。具体的には、時間分解赤外分光法によりQA-からQBへの電子移動反応を測定し、プロトン濃度による電子伝達制御を調べる。さらに、両キノン間の電子授受平衡におけるΔEmのpH依存性の要因を明らかにすることを目指す。2年目にあたる令和2年度では、時間分解赤外分光法により初めてQA・QB間の電子移動反応を直接的に観測することに成功し、QA-からQB-およびQBH2が生成する反応を観測した。特に、2段階目のプラストキノールQBH2が生成する反応においては、従来の測定では観測されなかったプロトン化に起因すると考えられる時定数をもつ反応が初めて観測された。1段階目の反応を含め、この反応のpH依存性を調べるまでには本研究期間内には至らなかったが、引き続き研究を進めていく予定である。また、QA・QB間に存在する非ヘム鉄の酸化還元電位EmのpH依存性を計測し、周辺アミノ酸残基のプロトン化状態との相関を解析することにより、アクセプター側の蛋白質環境を調べた。その結果、まず非ヘム鉄のEmはpH 5.0~8.5で傾き-52 mV/pHのpH依存性を示した。その上、非ヘム鉄が3価で存在する際には、高pH側でD1-H215が脱プロトン化しており、一方非ヘム鉄が2価の状態では周辺のGluあるいはAspのカルボキシル基が低pH側でプロトン化することが分かった。これまでD1-H215が非ヘム鉄のEmに関与することが想定されてきたが、本研究により低pH側ではGlu/Aspが協同的に関与することにより、幅広いpH領域で非ヘム鉄のEmのpH依存性に反映されていることが明らかになり、さらにこの反応はQA・QB間の電子移動反応のpH依存性にも影響を及ぼしていると考えられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochemistry
Volume: 59 Issue: 45 Pages: 4336-4343
10.1021/acs.biochem.0c00810
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Bioenergetics
Volume: 1860 Issue: 12 Pages: 148082-148082
10.1016/j.bbabio.2019.148082
https://www.bio.phys.nagoya-u.ac.jp/