Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
微細藻類が遠赤色光のみを利用してプロトン駆動力を維持し生育・生残するための光エネルギー変換機能の最適化戦略とその多様性を解明する。具体的には、遠赤色光順化にともなう色素組成の変化、酸素発生活性の変化、アンテナ色素の光吸収波長とエネルギー移動経路の変化、光化学系I/II 量比の変化、リニアおよびサイクリック電子伝達の寄与の変化を解き明かし、それらの多様性を明らかにする。
本研究では、微細藻類が遠赤色LED光のみの光環境下においてもプロトン駆動力を維持し生育・生残できる仕組みを「遠赤色光順化」と呼び、遠赤色光下における光エネルギー変換機能の最適化戦略とその多様性を解明することを目的とした。真核藻類の遠赤色光順化・適応の様式は、クロロフィルの吸収を長波長側にシフトさせたアンテナ(red-shift-Chl)によって、一般的なQy吸収に加え長波長側に更なる吸収が見られるものと、そうでないもの(①)に大別される。さらに前者は、白色光培養下においてもred-shift-Chlをもつもの(②)と、遠赤色光培養によって特異的にred-shift-Chlが誘導され、その際にクロロフィルbの合成が停止するもの(③)と、停止しないもの(④)の、およそ4つに分けられた。琵琶湖から分離した真正眼点藻biwa4-2株は②に相当した。単細胞緑藻Neochloris sp. biwa5-2 株(ヨコワミドロ目)は③に相当し、遠赤色光下ではクロロフィルbが合成されず、培養が進むとクロロフィルb量が、クロロフィル総量の0.1%程度にまで減少した。遠赤色光から白色光に移した場合は、3日程度で通常のクロロフィルa/b比にもどった。遠赤色光順化の過程において、クロロフィルb合成が停止する初めての知見である。ハマサンゴ骨格内から分離した糸状緑藻Phaeophila dendroides sa-1株(アオサ目)は、④に相当した。遠赤色光順化特性は、サンゴ骨格内に共生する藻類として研究例が多いOstreobium sp. (アオサ目)の特性と良く似ていた。PhaeophilaとOstreobiumは目を超えて異なる系統に帰属するため、この両者が良く似た順化様式をもつことは、これらがもつ遠赤色光順化の仕組みがアオサ藻綱内に広く備わったものである可能性を示唆した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021 2020
All Presentation (4 results)