Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究は、「感覚経験に応じた神経回路のスクラップアンドビルド(可塑性)が行動出力に及ぼす影響を解明する」ことを目的とする。そのため、視覚刺激に対する恐怖反応と、その出力元である上丘パルブアルブミン陽性ニューロンを対象に、感覚経験の外乱による行動出力の変化を解析し、その脳内基盤を行動学的解析、電気生理学的手法、光刺激、in vivoイメージングなどの手法を駆使して解明する。
今年度は主に視覚誘導性の恐怖反応の発達過程と視覚経験の外乱が及ぼす影響を明らかにするための行動解析を中心に研究を行った。(1)生後21日齢から56日齢のマウスで視覚刺激による恐怖反応(素早い逃避行動、またはフリージング行動)の出現確率を比較すると、逃避行動は生後21日齢で最も低く、生後28日齢で上昇し、以降一定した。一方、フリージング行動は逃避行動と比べると出現する頻度が低いが、生後21日齢の出現確率が最も高く、発達に従って徐々に低下した。(2)視覚経験の外乱が恐怖反応に与える影響を明らかにするため、生後21日齢から1週間(Early Dark Rearing; EDR)または生後28日齢から1週間(Late Dark Rearing, LDR)の暗室飼育を行ったマウスで、暗室から出した直後(生後28日齢または生後35日齢)の恐怖反応を解析した。その結果、EDR群では逃避行動、フリージング行動ともに発現確率が低下する傾向が見られたのに対し、LDR群では逃避行動のみ低下傾向が見られた。一方、EDR群では暗室飼育後に一週間の通常飼育を行うと、恐怖反応が回復したのに対し、LDR群では引き続き逃避確率が顕著に低下したままだった。以上の結果より、恐怖反応の発現パターンは発達過程で変化することが示された。また視覚経験は恐怖反応の発現に発達の時期によって異なる影響を与えている可能性があることが示唆された。さらに、LDR群で通常飼育に戻した後も逃避行動の出現確率が低下していたことから、恐怖反応の視覚経験依存的な可塑性には臨界期が存在する可能性が示唆された。現在、大脳皮質の神経活動を操作することで、上述の恐怖反応の経験依存的な可塑性に大脳皮質入力が果たす役割について解析を行っている。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2020
All Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results)