Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
大脳新皮質を構成する神経細胞(ニューロン)は脳深部で誕生し,より遅く生まれた細胞ほど脳表面近くの層を構成する.この現象は「inside-out」と呼ばれており,この形成過程においてニューロンは四つの移動モードを使い分けている.本研究課題では,興奮性ニューロンの四つの移動モードに対する数理モデルを開発し,大脳新皮質の形成過程を数値解析するための基盤技術を構築する.
本研究課題の目的は,大脳新皮質を構成する興奮性ニューロンの四つの移動モードに対する数理モデルを開発し,大脳新皮質の形成過程を数値解析するための基盤技術を構築することである.大脳新皮質のインサイドアウト構造の形成にはリーリンと呼ばれる分子が必要であり,リーリンはニューロンの四つの移動モード全ての制御に関わっていることが分かっている.ここでは,リーリンによる細胞骨格分子,細胞接着分子の制御に着目し,その効果を細胞骨格分子の重合・脱重合速度の変化,あるいは細胞接着分子の結合・離脱速度の変化としてモデル化する.大規模な数値解析によってこれらのパラメータの変化とニューロンの形態・挙動の変化の関係を力学法則に基づき定量的に理解する.ここでは,細胞を一様な非圧縮の粘弾性体と仮定し,細胞外部の粘性流体との流体構造連成問題としてモデル化した.細胞接着分子のリガンドレセプタ結合にはスリップボンドモデルを採用し,モンテカルロ法を用いて計算した.細胞表面にリガンド,細胞外部の足場にレセプタを分布させ,これらの結合による接着力を埋め込み境界法を用いて流体構造連成計算と連立した.ニューロンのモデルにほとんど同じ物性値を設定し,繊維のネットワーク状の足場とロッド状の足場にそれぞれ配置した.繊維のネットワーク状の足場に配置したニューロンは多極性移動でみられるような挙動を示した.一方,ロッド状の足場に配置したニューロンはロコモーションでみられるような挙動を示した.これらの結果から,多極性移動からロコモーションへの移動モードの変化では,細胞接着の足場となる細胞環境の変化が主な要因であり,細胞の力学特性や生化学特性の変化は二次的な効果となる可能性が示唆された.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2020
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results)
Journal of Biomechanical Science and Engineering
Volume: 15 Issue: 3 Pages: 20-00102-20-00102
10.1299/jbse.20-00102
130007879756