Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
集団生活を通して獲得される社会的順位や社会的役割といった社会行動特性を「社会的個性」と呼ぶ。ヒトをはじめとする多くの集団生活する動物にとって、「社会的個性」の創発・調整は、集団内での秩序維持、採餌の効率性上昇などに必要不可欠である。それにも関わらず、「社会的個性」の創発を司る脳内機構の詳細は明らかになっていない。本研究では、高精度トラッキング装置と薬理・光遺伝学による神経回路操作を組み合わせて、「社会的個性」がどのように創発するのかを明らかにする。具体的には、「社会的相互作用の履歴が社会的個性を形作る」という仮説を検証するための実証的研究を行う。
今年度は、前年度よりトラッキング精度を上げるため、装置まわりの改善を行った。実験装置側面に映り込む動物の画像がトラッキングを妨げることが判明したため、高さ40cmの柵を側面の3cm内側に設置することにより、映り込みを防止し、暗期のトラッキング精度を向上させることができた。一方、前年度からの積み残した課題であった、ハドリング後のトラッキング精度については、著明な改善は認めず、ハドリングを解析項目から外すことを決定した。同じく前年度からの課題である、明期中のトラッキング精度については、マウスが移動している時には、中程度の精度が得られたが、そもそも明期中にハドリングが多いというマウスの生態が反映されていることもあって、明期のトラッキング精度が暗期のトラッキング精度より劣るのは仕方がない面があると考えて、基本的には暗期の集団行動のみを解析対象とすることを決めた。使用するマウス系統としてICR系統を導入した。抑制性のhM4D(Gi)を用いた薬理遺伝学的操作による攻撃性減少を目的として、予備実験としてICR系統のオスにhM4D(Gi)を視床下部腹外側に注入し、レジデントイントルーダーテストを行ったが、対照群においても、十分な攻撃性が認めず、実験群との差が得られなかった。そこで攻撃性を下げるのではなく、攻撃性を上げる方向の操作をし、集団行動ダイナミクスの解析を行う方針をとった。興奮性のhM3D(Gq)を用いた薬理遺伝学的操作実験を行い、対象マウスの攻撃性が上がることを予備実験で確認した。今後はこの手法を使って、脳活動操作前後の集団行動を解析する予定である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。