Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
インスリンシグナル伝達は線虫の記憶学習を制御する。2種類存在する線虫のインスリン受容体のうち、味覚神経の細胞体に局在するタイプは学習の成立に、軸索に局在するタイプは学習後の行動出力に働く。学習に伴い、軸索で働くインスリン経路は脂質代謝経路と相互作用し、味覚神経が接続する2種の介在神経への出力を切り替えることが示唆されているが、その詳しい機構は不明である。本研究は、オミクス解析に基づく包括的解析により、記憶形成及び学習に伴う神経回路の切り替え時に働く分子経路を明らかにしたい。さらに、それらの分子の学習前後における動態を計測することで、神経可塑性を制御する分子機構の数理モデル構築に貢献したい。
本研究は、線虫のASER味覚神経において働くインスリンシグナル伝達に注目し、選択的スプライシングにより作られる2種のインスリン受容体アイソフォームによる学習行動の制御機構を明らかにし、記憶学習に働く新規の分子・神経回路制御を明らかにすることを目的とする。以下に、本年度の研究の進展及び得られた知見を記載する。○異なるホスホリパーゼC(PLC)アイソザイムを介して働くインスリン経路ASER味覚神経において、インスリン経路はPLCを介したジアシルグリセロール産生を軸索において変化させることで学習行動を調節することが明らかになっていた。そこで、2種のPLCアイソザイムに注目し、CRISPR/Cas9法を用いた細胞特異的ノックダウンなどにより、ASER味覚神経においてインスリン経路の下流で学習行動を制御する機構を解析した。結果、ASER味覚神経の軸索に局在するインスリン受容体経路は2種のPLCアイソザイムの活性を異なる方向に変化させることで、注目する学習行動、すなわち、飢餓を経験した環境における食塩濃度を忌避するようになるという劇的な行動変化を引き起こす、というモデルが明らかになった。この制御において、2種のうちの少なくとも1種のPLCはインスリン経路により軸索において直接リン酸化されることで学習行動を制御することが示唆された。○リン酸化プロテオーム解析神経細胞の軸索で働くインスリン経路がリン酸化制御する分子群を網羅的に探索するために、軸索に局在するインスリン受容体のアイソフォーム特異的変異体と強制発現株からそれぞれリン酸化タンパク質を抽出し、リン酸化プロテオーム解析を進めた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2020 2019
All Journal Article (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (4 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)
PLoS Genet.
Volume: 15 Issue: 7 Pages: e1008297-e1008297
10.1371/journal.pgen.1008297