Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
神経ネットワーク中において、JNK活性がいつ、どこで、どの程度変化するのかを、神経細胞の初代培養を用いて生細胞で評価する。JNK活性をMKK7 cKOマウス由来の神経細胞と比較し、MKK7によるJNK活性制御機構の数理モデルを立てることで、JNK活性制御の重要反応を推定する。MKK7-JNK経路を制御する分子を網羅的手法により同定することで、MKK7が神経細胞でJNK活性を制御する分子機構の詳細を明らかにする。得られた知見に基づきMKK7-JNK経路の活性を変化させることで、神経細胞の応答がどのように変化するか、神経細胞の恒常性維持機構にどのような影響を与えるかを検証する。
MAPキナーゼ経路は、細胞の運命を決定する重要なシグナル伝達経路である。その一つの経路としてc-Jun NH2-terminal kinase (JNK)経路が存在する。JNKは二つの上流キナーゼにより活性化されるが、その一つがMAP kinase kinase 7 (MKK7)である。MKK7-JNK経路は、ストレス依存的に活性化されることがよく知られており、特に細胞死との関わりがよく研究されている。多くの組織においてJNKの活性は低い状態に保たれている一方で、脳においてはJNK活性が非常に高い状態で維持されている。脳において細胞死が頻繁に観察されるわけではないことから、JNKはその活性により、脳で何らかの生理機能を発揮していると考えられる。そこで、神経細胞特異的なMKK7欠損(MKK7 cKO)マウスを作製し、神経細胞のMKK7-JNK経路の生理機能の解析を行った結果、MKK7 cKOマウスが加齢依存的な運動機能障害を呈することがわかった。MKK7 cKOマウスが若齢期において運動機能障害を示さず、中齢期以降に顕著な運動機能障害を示すことからMKK7-JNK経路は神経細胞の機能の維持、つまりは恒常性を保つために必須の役割を担っていると考えられる。本研究では、MKK7-JNK経路の神経細胞恒常性維持機構において果たす役割を、数理科学や網羅的なスクリーニング、オミックス解析を駆使して明らかにすることを目指し、まずは、当初の目的であるJNK活性をモニターするFRETプローブによる生細胞JNK活性評価系の確立を目指した。報告されているJNK活性プローブを購入または作成し、神経細胞内のJNK活性を正しく評価できるか検討した。その結果、現在報告されているFRETプローブでは神経細胞内のJNK活性を定量的に評価することはできなかった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。