Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
睡眠中には記憶の定着などの「オフライン学習」が行われていると考えられている。このオフライン学習は動物にとって重要な意味をもつ経験を効率よく記憶するために重要な役割を果たしている可能性があるが詳細は不明である。記憶には海馬が重要な役割を果たしているが、その学習則は未だ定説を見ない。この背景には海馬の出力は他の脳領域での情報処理を経て行動や記憶に反映されるため、海馬単体の学習則を構築することが難しいことがある。そこで、本研究ではラットの複数の脳領域から多数の神経細胞の活動を一斉に記録し、海馬を含む大域的なネットワークにおける睡眠中のオフライン学習アルゴリズムを推定する。
前年度は、恐怖条件付け学習と空間記憶を組み合わせた課題行っているラットからの超大規模電気生理学記録データの解析から、経験時の活動パターンが経験後の睡眠中に扁桃体、腹側海馬、大脳皮質前頭前野のいずれにおいても再び活性化されることと、異なる脳領域の神経活動パターンの再活性化のが同期して起こることを明らかにした。本年度はこの解析をさらに進め、これらの脳領域横断的な同期活動に関連するネットワーク活動を同定した。具体的には、個々の同期活動イベントが起きるタイミングを特定し、そのタイミングをトリガーとして局所電場電位のウェーブレット振幅の平均を求めた。その結果、それぞれの同期活動に関わる脳部位において、100-200Hz程度の速い局所電場電位の振動が一過的に亢進することが明らかになった。さらに、これらの一過的な振動が起こったタイミングを検出し、その内外で同期活動の頻度を比較することにより、速い局所電場電位の振動の際に選択的に同期活動が起きていることを示唆する結果を得た。上述の同期活動は睡眠中に検出されたものであるが、同様の現象が覚醒時にも観察されるかを解析した。その結果、扁桃体―大脳皮質前頭前野の同期活動は記憶の獲得の際にすでに観察され、記憶の想起の際にも同様の同期活動が見られることが明らかとなった。一方、腹側海馬―大脳皮質前頭前野の同期活動は記憶の獲得の際にはほとんど見られないが、その後の睡眠中に生じ、記憶の想起の際にも再び現れるという結果を得た。これらの結果は、経験により生じる扁桃体ー大脳皮質前頭前野の同期活動に加え、経験後に新た生じる腹側海馬ー大脳皮質前頭前野の同期活動が記憶を固定化するためのオフライン学習に深く寄与している可能性を示唆するものである。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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