Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究は、化学分析を用いて復元したヒトの移動や物流の遺跡間・時代間の比較から、都市誕生にいたる過程として、ヒトの移動や物流が単調だったと予想される狩猟採集社会、自給自足的な農耕村落社会から複数の集落ネットワークを包含した複雑化社会への移行の様相を明らかにする。そのために、西アジアの新石器時代から青銅器時代遺跡において、出土人骨や炭化種子、動物骨のストロンチウムや酸素、窒素、炭素同位体比測定などの化学分析を実施し、当時のヒトの移動や食料とされた穀物や動物の流通と消費を復元する。食物資源の共有と消費から共同体内小集団が検出可能となれば、初期定住村落における社会構造に踏み込んだ議論が可能となる。
シリアの土器新石器時代遺跡のテル・エル・ケルク、ヨルダンの銅石器時代遺跡のハラアト・ジュヘイラ、イラクの新アッシリア時代の都市遺跡のヤシン・テペ、バーレーンのティロス期(紀元前330年~紀元後629年)のマカバ古墳群の出土人骨で出身地を反映するストロンチウム同位体分析を行い、各遺跡に埋葬された人骨に含まれる移入者の存在を検証した。その結果、テル・エル・ケルク遺跡では成人人骨はすべて在地の出身者と判定された一方で、小児~若年齢3個体が移入者と判定された。小児期に死亡した個体だけが移入者であるという結果の解釈は難しいが、男女問わずに成人が在地だったことから一方の性だけが婚姻に伴って移住していた傾向は見られなかった。この結果は、発掘報告書『The Neolithic Cemetery at Tell El-Kerkh』で報告した。銅石器時代の遊牧民の墓と考えられるハラアト・ジュヘイラの出土人骨は一律なストロンチウム同位体比を持っており、明確な移入者の存在は確認されなかった。また新アッシリア帝国期の辺境の都市遺跡であるヤシン・テペの人骨5点も一律なストロンチウム同位体比を持っていた。しかし現状で測定した資料数は極めて限られているため、今後に資料を増やして検証する必要がある。マカバ古墳群出土人骨2個体から得られた3点の資料では、それぞれの個体が異なるストロンチウム同位体比と酸素同位体比を示した。この結果は、マカバ古墳群には大きく環境の異なる地域の出身者が埋葬されていたことを示す。パルミラの隊商との関わりが深いマカバ古墳群の被葬者の特殊性を反映していると考えられる。この結果は『ヘレニズム~イスラーム考古学研究 2020』で報告した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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All Int'l Joint Research (7 results) Journal Article (9 results) (of which Int'l Joint Research: 4 results, Peer Reviewed: 4 results, Open Access: 4 results) Presentation (9 results) (of which Invited: 1 results) Book (1 results)
西アジア発掘調査報告会報告集
Volume: 29 Pages: 32-37
The Neolithic Cemetery at Tell El-Kerkh
Volume: - Pages: 317-322
Volume: - Pages: 355-372
Journal of Archaeological Science
Volume: 136 Pages: 105505-105505
10.1016/j.jas.2021.105505
西アジア考古学
Volume: 22 Pages: 1-15
40022597163
Volume: 28 Pages: 85-90
ヘレニズム~イスラーム考古学研究 2020
Volume: 2020 Pages: 85-103
120007006448
Journal of Archaeological Science Reports
Volume: 33 Pages: 102565-102565
10.1016/j.jasrep.2020.102565
Journal of Archaeological Science: Reports
Volume: 27 Pages: 101982-101982
10.1016/j.jasrep.2019.101982