Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
欧州諸都市における近代都市計画は、近代化にともなう都市部の急激な人口増加に対応するため、新市街地建設を喫緊の課題としていた。そのため古くからその地に存在していた地域資源を軽視し画一的な都市を形成させた。これが都市計画史の通説である。しかしスペイン地中海中都市バレンシア研究を通じて、中小都市では地域資源を尊重しながら近代都市計画が作成、施行されてきたのではないかという仮説を抱いた。地中海沿岸部に位置するスペイン、トルコ、エジプトの3 都市を対象に、近代化にともない都市拡張の必要が生じた折、千年以上存続する灌漑水路網がどのように都市形成に影響を与えてきたのか、その経緯を明らかにする。
今年度は、夏期にアダナ(トルコ)、ザガジグ(エジプト)に調査に行き、3月中に公開シンポジウムを開催する計画であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、どちらも実現できなかった。現在所有する資料・データでの研究に切り替え、バレンシア(スペイン)の灌漑水路と都市形成の関係性について、マクロな地図を用いた分析とミクロなフィールドサーヴェイによる分析を行なった。マクロでは時代ごとの都市と農地の境界として、ミクロでは敷地同士の境界として灌漑水路が都市形成に影響を及ぼしていることを丁寧に導き出した。本研究成果は、都市計画系国際ジャーナルLAND(査読付)で再査読まで進んだが内容ではなく英文に問題があるとされ、再提出となった。次年度の6月採用を目指して修正を進めている。昨年度に現地調査を実施したモロッコ研究に関しては、特にマラケシュの調査結果を整理して、新学術領域研究「西アジア都市」2020年度第1回全体研究会にて発表した。マラケシュには地上を流れる灌漑水路(セキア)と地下を流れる灌漑水路(ケタラ)が共存しており、時期・時代に応じた両者の関係が都市形成に強い景況を及ぼしていることを明らかにした。とりわけ王朝権力により、王の庭園(Agdal)や都市全域に散在するゴルフ場に優先的に灌漑水路を流すヒエラルキーが顕在化しており、都市構造に強く影響を及ぼしている。結果的に市民は水不足に苦しんでいる現状であるものの、利用されなくなったセキアの地区内での小規模な再生など市民が主体となった活動が芽生えつつある。またバレンシア、マラケシュにおける研究成果をまとめ、Valley-city research on Islamic Culture CitiesというテーマでVIII AACCP symposiumに投稿した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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