Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究の目的は、15世紀後半のヘラートにおいて、タリーカ(スーフィー教団)が都市文化の発展に果たした役割を明らかにすることである。従来の研究では、ティムール朝末期のヘラートで隆盛を誇ったタリーカとしてナクシュバンディーヤがよく知られているが、同時期のヘラートで多くの信者を集めていたヌールバフシーヤという別のタリーカについては、十分に検証されてこなかった。そこで、本研究では、ナクシュバンディーヤとの比較を通じて、ヌールバフシーヤの教義と特徴を検証すると共に、それぞれのタリーカに属した人々の交流関係や活動の分析を行う。
2020年度の当初の研究計画としては、主に海外での写本調査と収集した写本の読解を進め、その内容分析を行うことを予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、2020年春以降長らく海外調査を実施することができなかったため、手元にあった一次史料の校訂本に基づいて内容の分析を重点的に進めてきた。やがて2022年夏頃からようやく自由な海外渡航が可能になり、2023年2月と3月にそれぞれトルコとパキスタンで写本調査を実施することができた。トルコではスレイマニエ図書館において、本研究の分析対象であるスーフィー教団ヌールバフシーヤの名祖ムハンマド・ヌールバフシュが遺したスーフィズムの教義に関わる作品群を収録した写本と、彼が影響を受けたとされるクブラウィーヤの導師アリー・ハマダーニーの作品群を収録した写本を調査した。また、ティムール朝後期のヘラートにおける宗教関係者や文人・学識者・知識人たちの交流を検証する上で必要となる、当時人気を博した文学ジャンルの写本群についても調査を行った。一方、パキスタンではパンジャーブ大学図書館において、ティムール朝後期の宗教関係者やイラン系官僚、学識者たちの動向に関する記述を数多く含む年代記と、同朝末期の君主とヌールバフシーヤの導師との交流を示す書簡・勅令の写しを収録した作品の写本をそれぞれ調査した。いずれの写本についても、該当箇所の複写データを入手し、その内容分析を進めた。以上のような調査と分析によって、ムハンマド・ヌールバフシュが唱えたスーフィズムの教義・思想面の特徴、およびティムール朝末期のヘラートにおけるスーフィー教団の活動について、多角的に検証することが可能になった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2022 2021 2020 2019
All Journal Article (4 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 3 results) Presentation (3 results) Book (1 results)
アジア・アフリカ言語文化研究 別冊
Volume: 1 Pages: 131-165
10.15026/117346
https://tufs.repo.nii.ac.jp/records/2232
史學雑誌
Volume: 第131編第5号 Pages: 303-308
Journal of Asian and African Studies
Volume: 2022 Issue: 103 Pages: 17-53
10.57275/ilcaajaas.2022.103_17
『都市文明の本質:古代西アジアにおける都市の発生と変容の学際研究』(2018-2022年度文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究の研究成果報告書2020年度)
Volume: 3 Pages: 245-254