Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
ニュートリノの混合角および質量発見の糸口は、およそ30年ほど前の大気ニュートリノ観測から得られた。我々は、実験と理論の食い違いがニュートリノ振動で説明できることを示し、更に、ニュートリノ質量を0とした場合の大気ニュートリノフラックスの精密計算を行うことにより、混合角と質量の決定に貢献した。しかし、一次宇宙線と大気の衝突により作り出される大気ニュートリノは、実験から定まるハドロン相互作用の大きさの誤差から生じる不確定要素を含んでいる。本研究の目的は、これらの誤差を抑えることにより精度の高い大気ニュートリノスペクトラムの理論計算を行いニュートリノ物理学の進展に寄与することである。
ニュートリノの性質の解明は、素粒子論の発展において重要である。素粒子論における電弱相互作用の標準理論は、実験や観測と極めて良く一致している。この理論では、ニュートリノを除く他の粒子は質量を持っている。唯一、ニュートリノのみがゼロ質量である。ところが、1988年のカミオカンデの論文で、標準理論では説明できない大気ニュートリノ異常が観測された。我々は、早速、この異常がニュートリノに質量があることで説明できることを示した。同時に、大気ニュートリノの理論計算を開始し、カミオカンデグループの実験解析に協力した。観測装置は、スーパーカミオカンデへと発展し、ニュートリノには質量があること、クォーク同様に弱い相互作用において混合を引き起こしていることが明らかになった。これら一連の結果は、2015年に梶田隆章宇宙線研究所所長等のノーベル物理学賞へと繋がった。ニュートリノ質量が重要な訳は、これが、宇宙の成り立ちの理解や電弱相互作用の背後にあるメカニズム解明の手掛かりになるからである。大気ニュートリノ研究は、ニュートリノの性質を明らかにする数少ない研究手段の一つである。ところが、気ニュートリノフラックス計算には、様々な不確定性が存在する。その中で最も大きなものは、一次宇宙線と大気原子とのハドロン衝突の前方散乱断面積である。まず、我々は、ハドロン相互作用モデルの不定性がニュートリノフラックスにどのように影響するかを定量的に調べた。ハドロン相互作用の不定性は、生成されるミューオンフラックスの不定性をももたらす。ところが、大気ミューオンは精密に測定されている。そこで、ミューオンのモデル計算と観測されたフラックスを一致させることによりハドロン相互作用の不定性を小さくすることができた。しかし、異なる高度のミューオンデータは、異なるハドロン相互作用モデルを生ずることも判明した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Physics: Conference Series
Volume: 1468 Issue: 1 Pages: 012190-012190
10.1088/1742-6596/1468/1/012190
Physical Review D
Volume: 100 Issue: 12
10.1103/physrevd.100.123022