Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
原子核を2つやそれ以上に分割する核分裂は、原子核からエネルギーを取り出す手法として人類が実用化した唯一の手法である。しかしながらその反応機構をミクロに記述することにまだ成功していない。従来の理論の問題は、分割の単位となる「クラスター」として何がどのように出現するのかという点が、現象論的仮定に基づいている点である。同じ問題は、核融合の記述や多くの核構造模型にも当てはまる。本研究では、外部からの余計な仮定を導入することなく、原子核自らの集団ダイナミクスに沿って、集団運動の自由度を非経験的に決定する理論手法を開発することを目指す。また、開発した手法の一般化と分野横断的発展も目指す。
低エネルギー核融合反応において、反応する2つの原子核の相対運動は、接触後にはネックの形成や原子核形状のダイナミカルな運動に連続的に変化するため、一連の構造変化を統一的に記述することが求められる。また、クーロン障壁以下のエネルギーでの核融合反応は、量子トンネル現象として発現するため、量子力学的な記述が必須となる。微視的な記述を目指し、系の低エネルギー集団ダイナミクスに従って最適な集団部分空間を決定する断熱型自己無撞着座標(ASCC)の方法を適用した。3次元座標空間の格子状離散化表現を用いた非制限計算コードを開発し、これを比較的軽い原子核に対して適用し、数値計算を実行した。これにより、人為的な操作なしに、原子核の低エネルギー核反応経路を解明し、核反応モデルのポテンシャルを決定した。続いて、集団慣性質量をこの経路上でASCCに基づき微視的に計算し、核反応モデルにおける核間相対運動と遠心力ポテンシャルに寄与する慣性能率を求めた。これらの成果は、核反応モデルを微視的に構築する方法の開発に成功したことを意味する。過去の研究からの大きな進歩として、核子有効質量に起因する困難が取り除かれたことがあげられる。核内における媒質効果により、核子は核内で真空中よりも軽くなっていることが知られているが、広く用いられている集団慣性質量の公式を用いると、この効果が原子核全体の並進運動等にも効いてしまい、重心運動に対する全質量が正しく計算できない。我々の開発した方法では、この問題が解決され、相対運動、回転運動などに対しても、衝突する原子核が遠方に離れた漸近的状態において換算質量を正しく再現する。これまで核反応模型では、核間距離によらず換算質量の値を用いることが慣例であるが、我々の結果は、2つの原子核の接触後に、質量が著しく増大することを示唆しており、核融合確率を小さくする方向に寄与するこが示された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2022 2021 2020 2019
All Journal Article (6 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 6 results, Open Access: 3 results) Presentation (8 results) (of which Int'l Joint Research: 4 results, Invited: 5 results)
PHYSICAL REVIEW C
Volume: 105 Issue: 3 Pages: 034603-034603
10.1103/physrevc.105.034603
EPJ Web of Conferences
Volume: 260 Pages: 11041-11041
10.1051/epjconf/202226011041
Physical Review C
Volume: 103 Issue: 1 Pages: 014306-014306
10.1103/physrevc.103.014306
Frontiers in Physics
Volume: 8
10.3389/fphy.2020.00016
120007132776
Volume: 101 Issue: 4 Pages: 045804-045804
10.1103/physrevc.101.045804
120007132726
JPS Conference Proceedings
Volume: -