Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
フッ化物イオンを電荷移動体として用いるフッ化物イオン電池(FIB)は、電解液を使わない固体電池であるので高い安全性を持ち、かつ電気容量とエネルギー密度も十分であるために次世代エネルギーとして期待されている。高性能のFIBを実現するためには、フッ化物イオンが高速で移動できる固体電解質が決定的な鍵を握っている。本研究は、核プローブを利用したミクロスコピックな研究を行なうことで、フッ化物イオンの拡散過程を明らかにするとともに、FIBの開発と実用化に向けた基礎データを提供することを目指している。
単結晶フッ化カルシウムを試料に、短寿命57Mn核をイオン注入したインビーム・メスバウアースペクトルを295Kと310Kで長時間観測した。スペクトル全体の概形がシングレットS1に収束する方向となった。室温近傍で観測したS1の線幅のブロードニングは、プローブ核として埋め込まれた57Fe核の最近接原子であるフッ化物イオンの局所場での揺らぎの結果であると示唆された。メスバウアー分光法は、プローブ核57Feの周囲の微視的な環境変化に敏感である。従来のフッ化物におけるフッ化物イオンの拡散挙動は、高温領域におけるマクロスコピックな実験データをもとに考察されてきた。本研究のような原子スケールでの挙動についての研究結果は例が少ない。この結果から、室温近傍でフッ化物イオンの長距離拡散を起こすためのlocal motionの前駆現象が起こっているのではないかと考えられる。295Kおよび310Kの時間分割インビーム・メスバウアースペクトルの結果からシングレットの線幅を評価した。random-walkモデルに基づいたEinstein-Smoluchovskiの式を用いると、295Kにおける平均ジャンプ時間τと平均ジャンプ距離rは、それぞれ700nsと0.22nmとなり、メスバウアー分光による拡散係数Dは5.76E-15 m2/sとなった。この値は、トレーサー実験で得られた400℃(673 K)での拡散係数の約1/200に相当する。310Kにおいて同様の計算をすると、平均ジャンプ時間τと平均ジャンプ距離rは、それぞれ1400nsと0.31nmで、ジャンプ時間が長く、ジャンプ距離は大きくなっていることがわかった。本研究から、原子スケールで観察すると室温近傍でもフッ化物イオンはすでにイオン拡散の前駆的な挙動を示していることを初めて明らかにすることができた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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