Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
我々動物が生存していくためには、時々刻々と変化する環境に対して適切なタイミングで適切な行動を取る必要がある。しかし我々の身体には生理的な時間遅れが存在しているため、逐一感覚情報を確認してから行動していてはダイナミックな環境変化についていくことが不可能である。そのため我々の中枢神経系は何らかの方法で自分の行動の結果(未来)を予測して運動指令(現在)を決定していると考えられる。本研究では1)ウィルスベクターを用いた新しい神経回路操作技術を確立し、さらに2)運動制御理論に基づくシミュレーションを行うことで、未来予測に基づく運動制御の神経回路(ハードウェア)と神経機能(計算論)を包括的に明らかにする。
本研究では以下の2つのPhaseを段階的に達成することを計画していた。まずPhase1では、予測的な運動制御に必要な遠心性コピーを小脳に伝える神経回路として、脊髄固有ニューロンが脳幹外側網様核を介して小脳に投射する経路(PN-LRN経路)をターゲットとして、1)ウィルスベクターによる霊長類 (マカクザル)中枢神経への遺伝子導入、および2)人工受容体によるシナプス伝達修飾を行い、PN-LRN経路の神経伝達を一過的・選択的に阻害する方法を確立する。次にPhase2で、Phase1で確立した手法を用いてサルが運動課題を行っている最中にPN-LRN経路を遮断し、この経路が運動制御にどのような機能を果たしているのかを明らかにする。課題の最終年度である本年度は、上記のPhase1のPN-LRN経路への遺伝子導入法の確立とPhase2の電気生理学および行動学的検討を目標としていた。本年度までの研究成果として、サル個体2頭の脊髄に対してウィルスベクターを注入して抑制性人工受容体(hM4Di)を発現させ、さらに側網様核へリガンド(DCZ)を局所注入することにより脊髄から外側網様核への上行性経路を遮断する実験を遂行した。まず免疫組織学的な検討により、脊髄からLRNへの神経経路に目的タンパクが発現したことを確認し、目的通り脊髄LRN経路にhM4Diを発現させることに成功した。一方、さらにこの神経伝達の遮断効果を調べるために、電気生理学的および行動学的な検討を行ったが、いずれも有意な神経伝達遮断効果は認められなかった。この原因として、行動学的な変化を認めるためには発現量が十分ではない可能性や、電気刺激による神経応答では抑制効果が認められない可能性が考えられた。この結果は今後、神経経路のターゲット選択的遮断を進める上で検討するべき課題を浮き彫りにする大変有用な結果であった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021 2020 2019 Other
All Int'l Joint Research (1 results) Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 3 results) Remarks (1 results)
Current Biology
Volume: 31 Issue: 7 Pages: 1476-1487
10.1016/j.cub.2021.01.049
Proceedings of the National Academy of Sciences
Volume: 117 Issue: 44 Pages: 27655-27666
10.1073/pnas.1919253117
120006892060
bioRxiv
Volume: - Pages: 1-29
10.1101/640201
120006823945
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2021-02-26-0