Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
近年,生殖補助医療における体外受精の利用者が急増している.しかし,体外受精後の胚を子宮内に戻し,妊娠に至る率は3割程度に留まり,患者とその家族にとっては,心身及び経済面で大きな負担となっている.さらに,体外受精では,子宮外妊娠等の重大事象の発生率が,自然妊娠と比べて高いことも問題である.一方,研究代表者は,構成要素のサイズよりも極めて薄く柔軟なポリマー膜によって作製される,「膜マイクロデバイス」の概念を提唱し,開発を進めてきた.本研究では,代表者が培ってきた膜マイクロデバイス技術を応用し,体外受精後の胚を安全に子宮内に移植し,妊娠率の向上とリスク低減に寄与する新たな医療機器を開発する.
胚を子宮内に移植し,その位置を保持し,一定期間後に胚を放出する機構を持つマイクロロボットを開発し,力学的評価試験を行った.マイクロロボットは生体適合性の高いエラストマーにより作成され,内部にリング型磁石が埋め込まれている.また,中心部に胚収容部を持ち,上面の十字のスリットが胚の放出孔の役割を果たしている.十字のスリットは十分に細く,胚を内部に保持することが可能である.また,胚は内部で生育を続けた後,底面に封入されたゲルの膨潤により子宮内壁に向かって放出される.マイクロロボットは外部磁石と同軸上に固定され,子宮内膜面がその軸に垂直である場合,マイクロロボットには膜に垂直な向きに磁力が働き,水平な向きに膜との摩擦力が働く.これらはマイクロロボットが固定される方向に作用する力である.一方,マイクロロボットには重力や,患者の動作により生じる慣性力も働く.この時,マイクロロボットの位置を保持するには,磁力と摩擦力がともに,各方向の外力の大きさを上回る必要がある.そこで,適切な外部磁石のサイズを決めるに,被験者の下腹部に加速度計を設置し,日常生活動作(歩行,ジョギング,階段の上り下り) 時の加速度を計測した結果,最大3Gであることを明らかにした.また,腹壁から子宮までの距離は6cm が最頻値として知られている.これらの条件の下で磁力と静止摩擦力の大きさを計測するため,モデルとして,水中に置いたウシ大腸内でマイクロロボットの保持力を測定した.その結果,外部磁石-マイクロロボット間の距離6cm で3Gの加速度に耐えることがわかった.以上の結果により,開発した位置制御システムは,平均的な日本人患者に対して,十分な実用性を持つことを示した.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2020 2019
All Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Invited: 1 results)