Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究は,樹木の力学的最適化システムである成長応力を対象とし,特にあて材部における大きな成長応力の発生メカニズムの解明を目指して知見を得ることを目的とする.「樹木組織のどの部分がどのように応力を担っているか」を動的な情報として得ることを目指す.そのための手法として,「湿熱回復」現象に着目する.湿熱回復現象は成長応力の遅延的な解放によって起こるとされており,成長応力の検出に比べて観察・分析手法の選択肢が多い.様々なアプローチから明らかにした湿熱回復のメカニズムから,成長応力の発生メカニズムの解明へとつなげる.
コナラおよびケヤキの引張あて材を試料として,引張あて材の湿熱回復現象の性質を明らかにするための実験を行なった.引張あて材部から作製した切片を,熱水処理,有機溶媒置換後に加熱処理,有機溶媒と水の混合溶液中での加熱処理などをおこない,引張あて材の湿熱回復現象には非晶領域の水分が重要な役割を果たしていると考えられた.また,40℃~80℃の様々な温度で温水処理をおこない,湿熱回復の温度依存性を測定した.その結果,湿熱回復による収縮速度と収縮量に明らかな温度依存性があり,これを指数関数モデルで説明することを試みた.また,湿熱回復量の温度依存性から見かけの活性化エネルギー(Ea)を算出し,これまでに明らかにしている圧縮あて材の湿熱回復におけるEaや,木材成分の熱軟化におけるEaを同様のスケールであることを確認した.さらに,ケヤキ丸太2本とケヤキ立木4本の表面成長応力を測定し,表面成長応力と湿熱回復の対応を確認するための試料を採取した.この過程で,ケヤキの樹幹内残留応力分布の特異性を見出した.樹木の成長と樹幹内残留応力の形成との関係を明らかにする上で有用な情報になると思われたため,これについても十分なケヤキ丸太試料を準備して樹幹内残留応力の網羅的測定をおこない,特異な残留応力分布の存在を明らかにした.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2022 2021 2020
All Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Peer Reviewed: 3 results, Open Access: 1 results) Presentation (5 results) (of which Invited: 3 results)
Wood Science and Technology
Volume: 56 Issue: 2 Pages: 573-588
10.1007/s00226-022-01360-7
Journal of Tropical Forest Science
Volume: 34 Pages: 1-10
木材工業
Volume: 76 Pages: 462-467