Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
・光学顕微鏡技術や光音響技術により全細胞の挙動を単細胞単位で追跡する手法の確立、・タイムラプス動画からの全細胞の挙動解析によるシンギュラリティ細胞の特徴の抽出・全細胞又は全ての全能性幹細胞でマルチカラー蛍光タンパク質を発現するゲノム改変カワカイメン作成、即ち、ゲノムへの遺伝子挿入技術の開発、及びマルチカラー発現遺伝子改変カワカイメンの作出、・ 移植によるシンギュラリティ細胞候補の機能の検証 を目指す。
本研究では、全能性幹細胞が集合し細胞塊を形成、周囲に形成されるコラーゲンの殻の中で、休止または休眠状態となり、低温などの厳しい生息環境に耐性を持つ「芽球形成」、という主に淡水棲のカイメン動物が持つ無性生殖に着目した。特に、活発に移動する多数の幹細胞が集合し始める事象をシンギュラリティと捉え、全能性幹細胞集合開始を捕らえ観察すること、その微小環境に何らかの傾向や特徴の有無の解明、最終的には幹細胞集合を引き起こす細胞・分子機構の解明を大きな目的に、研究の基礎を築くことを目的とした。2020年度は、新型コロナウィルス感染防止対策のため、予定していた技術補佐員雇用が出来ず、研究代表者1人で解析を試みたが、研究を遂行する時間を得ることが著しく困難であり、研究費のほぼ全て(95%)を返還した。大きな進捗は得られなかったものの、カワカイメンの体の一部を顕微鏡下での観察が可能な100μm程度の狭い空間に形成させ、その部分に芽球形成を形成させる条件の再検討を行い、より高い確率でこの部分で全能性幹細胞集合(芽球形成の初期段階)が開始される条件を確立した。これにより、薬剤による芽球形成誘導後、幹細胞の密度が増加するなど、実体顕微鏡下で観察される、カイメン体内での段階的な細胞レベルでの変化が明らかになった。この観察を手がかりに、幹細胞集合が開始される可能性がある部位の予測(的中率10%以下)がある程度可能となり、倒立顕微鏡によるタイムラプス撮影に数回成功した。1例ではあるが、少数の幹細胞が集合した後、再度細胞が分かれ、離れた位置に再度集合し芽球形成を行う様子が観察され、プレパタンによる特定の位置に幹細胞が集合するのではなく、ストカスティックな中から細胞が集合する自己組織化による仕組みである可能性が考えられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。