Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究が参加する新学術領域は、シンギュラリティ細胞、すなわち集団中で特異な振る舞いをする細胞が、臓器や個体といったシステム全体の運命を決定するという現象の解明を目指している。そこで本研究では、生細胞イメージング動画データ内のシンギュラリティ細胞を自動的に発見する手法を開発する。より具体的には、データから画像解析および時系列モデルの学習によって細胞の振る舞いに対する予測モデルを構成し、それを各細胞へ適用することで「どの程度平均から外れた振る舞いをするか」を定量化する。本手法は、上皮培養細胞の創傷治癒過程というよく研究された系を用いてその有効性を検証する。
MAPキナーゼERK活性の時空間動態が引き起こす細胞集団運動が、創傷治癒やがんの浸潤との関連から、近年注目を集めている。この現象は、組織力学とシグナル伝達系の間でフィードバックループが構成されることから発生していると考えられており、その力学-化学相互作用について様々な数理モデルが提案されている。しかし、それらのモデルは集団運動の組織スケールでの観察を定性的に再現するものの、仮定されている細胞生物学的メカニズムが現実と対応しているかについての検証に乏しい。その結果、異なる機構を仮定し た複数のモデルの支持者の間で論争が発生している。我々は最も直接的な解決手段として、 一細胞レベルでモデルと実際の挙動を定量的に比較することを試みたが、各々の細胞挙動が極度にランダムであるため、モデル選択が困難であると判明した。そこでdiscrete-to-continuum極限をとる手続きによって一細胞レベルの分解能を持ったモデルを組織スケールのモデルへと変換し、その粗視化されたスケールにおいてモデルと実験結果の比較を実施する手続きを提案した。元の細胞スケールモデルと我々が得た組織スケールのモデルの対応を、数値計算によって示すことができた。組織再生過程におけるERK活性の細胞間伝播はマウスやゼブラフィッシュなどの様々な脊椎動物において広く観察されており、普遍的なメカニズムの存在が示唆されている。我々の成果はその解明に役立つと期待できる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results)
Scientific Reports
Volume: 11 Issue: 1 Pages: 4069-4069
10.1038/s41598-021-83396-6