Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
物体カテゴリ認知に関わる腹側視覚皮質は顔の視覚認知も司る。中でも、顔に選択的応答を示す神経細胞が集団がとなって存在し(顔パッチ) 、それらが互いに緊密に結びついた『顔パッチシステム』を構成している。一方、これまで情動に関連する脳領域とされてきた扁桃体が、顔や表情、視線などを素早く検知することから、無意識における顔情報処理に重要な役割を果たす可能性が示唆されているが、その詳細は不明である。本研究では、扁桃体が腹側視覚野と連関して、顔や表情、視線の視覚情報処理と情動身体反応の相互作用を実現する仕組みについて、知覚、神経情報処理機構、身体反応の3つの側面から統合的に明らかにする。
本研究では、脳の代表的な情動処理中枢である扁桃体が、霊長類で共通の顔情報処理領域とされる、視覚野顔選択性領域(“顔パッチ”)における表情視覚情報処理に果たす役割を評価するため、霊長類では世界でも例の少ない化学遺伝学による神経操作研究を行っている。我々は化学遺伝学に用いる、これまでの薬剤と比較して非常に優れた新規人工薬剤 Deschloroclozapine (DCZ)を見出した(Nagai&Miyakawa et al., Nat Neurosci 2020)。また、この手法で経路選択的な神経操作を行えることを示した(Oyama et al., Sci Adv 2021)。次に、この新規アゴニストDCZおよび興奮性化学遺伝学受容体hM3Dqを用いてマカクザル扁桃体の神経活動を賦活化させ、腹側視覚皮質“顔パッチ”を広範囲で覆う表面脳波電極(ECoG)より、サルが顔の画像を注視した際に反応する視覚応答を計測した。化学遺伝学アゴニストDCZ投与により扁桃体神経活動の持続的賦活化を引き起こすことで、腹側視覚野の視覚応答性神経活動パターンにおいて、1)顔選択性領域内の顔画像に対する視覚応答が減弱すること、2)中立表情と脅威表情の画像に対する視覚応答の差が消失すること、3)色や形の視覚情報については扁桃体操作による影響が生じないことを見出した。また扁桃体操作が実験個体の主観的な情動に及ぼす影響を評価するため、代表的な自律神経応答である瞳孔径反応を調べた。操作をしない場合は、中立表情より脅威表情に対してより大きな散瞳を示したが、扁桃体を賦活化するとこの差は消失した。これらの結果により、扁桃体の活動を持続的な賦活化により乱すことで個体の表情認知が乱されること、その効果は扁桃体から腹側視覚皮質への情報伝達を乱したことによる可能性があること、を示し、現在論文投稿準備中である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2022 2021 2020 Other
All Int'l Joint Research (1 results) Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results, Open Access: 3 results) Presentation (6 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Invited: 1 results) Book (1 results) Remarks (2 results) Patent(Industrial Property Rights) (1 results)
The Journal of Neuroscience
Volume: 42 Issue: 12 Pages: 2552-2561
10.1523/jneurosci.1657-21.2021
Science Advances
Volume: 7 Issue: 26 Pages: 1-9
10.1126/sciadv.abg4246
120007089253
Science Advances (in press)
Volume: ー
https://www.qst.go.jp/site/press/42113.html
https://www.jnss.org/news-topics?id=210127-01