Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
木星の磁気圏内で高い変動放射線量下にあると予想され、かつ地表は80-120K と低温であるエウロパ環境を模擬するため、77K 以上での赤外領域まで測定可能な分光器を設置する。氷を製氷機で、K-Na-Cl 系をすでに最適化した電気炉による溶融法で、Mg-S 系を水溶液法で成長させ、77K で電子線照射し吸収スペクトルを低温測定する。同時に、透過型電子顕微鏡中で氷の電子線照射と観察を行い、原子空孔がナノ空孔に成長する温度測定を行う。これらから、放射線量や温度変化による反射スペクトル変化と、将来の探査機や望遠鏡で放射線下での水圏惑星の非氷成分同定が可能となる方法の構築を目指す。
エウロパでの放射線バースト環境下での氷の光学的変化を調べるため、K-Na-Cl、ジオポリマー、および氷の結晶に対して、本学ETIGO-IIIのパルス電子ビームおよび量研機構一号加速器の定常電子ビームにより照射を行った。ETIGO-IIIにおいては、ピークエネルギー2MeV、電流1kA、パルス幅100nsの電子ビームを、室温および液体窒素温度にて3回照射した。フィルム線量計で測定した線量は、1ショットあたり平均7kGyであった。室温照射後の氷の光学顕微鏡写真から、平均直径175μmの気泡が発生したことが分かった。この結果から、パルス電子線照射により、室温では可視光波長より大きな気泡を生じうることが判明した。気泡の発生原因について考察を行った。氷中の水素や酸素原子のはじき出しエネルギーを8-46eVと仮定して、キンチンピースモデルによりはじき出し損傷関数を計算したところ、0.14-0.35×10^-2であると推察された。一方、気泡の平均直径と間隔から見積もった気泡の体積割合はこれより1桁大きい4.7x10^-2であった。このことから、発生した気泡は、既報の論文で示されているように空孔が再結合したボイドではないことが判明した。また、パルス電子ビーム照射では局所温度上昇することが示唆されている。これにより水分子が蒸発しても、潜熱が除去され次第氷中では凝結して気泡は存在できないことが示唆された。次に放射線分解の可能性を検討した。放射線が水に入射すると、放射線分解によって水素と酸素分子が発生することが知られている。また、これらの再結合には温度が必要である。このため、0℃の氷中では再結合が阻害され、水素と酸素分子の気体の圧力により気泡が発生したと考えられた。上記の実験結果と考察から、本実験条件では、パルス電子ビーム照射により氷の光散乱が増加すると示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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All Int'l Joint Research (2 results) Journal Article (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results) Remarks (1 results)
Japanese Journal of Applied Physics
Volume: 61 Issue: SB Pages: SB1013-SB1013
10.35848/1347-4065/ac2c52
https://etigo.nagaokaut.ac.jp/suematsu/index.html