Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
カッシーニー探査機が撮影した画像データを解析する。対象天体をディオーネ・レア・ティティスとする。研究の実施にあたっては、以下の4段階で進める(1)画像データと探査機位置姿勢情報の収集と整理(2)リモートセンシング画像解析。地形状の解析と探査機の位置・姿勢情報の高精度を行う(3)各フライバイごとのモザイク作成とそれをつかった断層とクレーターの層序判定(4)断層面の幾何学的な解析による衛星の膨張した体積を推定する。そして膨張度を、衛星の熱進化モデルに内挿することによって熱進化史に制約をあたえる。
土星や木星の氷衛星は内部に液体の水からなる内部海を持っているとされ、これらの氷衛星の内部海も生命誕生の場として有望と見なされている。これら氷衛星の内部状態の推定のために、土星中型衛星ディオーネおよびレアのWispy構造と呼ばれる正断層地形に着目する。衛星内部の温度変化、内部海の凍結などによって体積が変化すると、表面に正断層性の地溝帯が形成されることが知られている。そのためこれらの各地溝帯の形成年代や、形成時に衛星がどの程度の体積が膨張したかを定量的に推定することができれば衛星の内部の温度変化量や、内部海の規模の推定に一定の制約を与えることができると考えられる。そこで土星探査機カッシーニー画像データを解析し、土星中型衛星の表面にある正断層性の地溝帯を調査した。今年度の作業によって土星衛星ディオーネ・レアの地形状の解析が完了した。新規に作成されたDTMは過去のものと比較しても10倍を超える高い精度を有しておりこれらのDTMではWispy地形が極めて明瞭に見えている。結果としてディオーネの表面積は約1%広がったことが明らかになった。球一様膨張とすると半径は3km大きくなり、体積は1-2%大きくなったことが示唆される。大まかな推定になるが総体積の10%ほどの内部海が氷になったもしくは氷マントルが30-50Kほど暖かくなったと考えるとこの衛星の膨張を説明できる。またレアの衛星の表面積は約0.1%拡大したことが明らかになった。これは球一様膨張とすると半径は約0.5km大きくなり、体積は0.2%大きくなったことが示唆される。今後は測定の正確さについて再度の確認を進めるとともに、これらの膨張度を、衛星の熱進化モデルに内挿することによって熱進化史に制約をあたえ国際学会誌にて論文を投稿することを目指す。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。