Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
火星表面の氷とともに高濃度の過塩素酸イオンが検出されている。しかしながらその生成過程や生成時期は不明である。環境条件として、氷物質が存在しており、太陽光紫外線ならびに高エネルギー荷電粒子にさらされている。氷への真空紫外光もしくは電子照射により酸化力の高い物質が生成すれば塩を酸化できる可能性がある。そこで低温氷(8~100 K)への真空紫外光および電子照射によって氷表面に生成した強い酸化剤となりうるO原子とOHラジカルの定量測定を試みる。また、含塩低温氷への真空紫外および紫外光照射による過塩素酸の生成実験を行い、宇宙および地球での生成反応機構解明の手掛かりを得る。
2つの実験を行った。まず光照射実験について説明する。試料を冷却するためのクライオスタットと185 nm以下の光を照射するために重水素ランプまたはエキシマレーザーを組み合せた装置を組み立てた。試料は、NaCl水溶液を液体窒素に霧吹きで吹きかけて凍結粒子を作製した。この凍結粒子をプラスチックセルの中に入れ、そのセルを-50℃のクライオスタットの中に入れた後、5時間真空紫外光照射を行った。照射後、セルの中の凍結粒子を溶解させて、紫外可視分光光度計とエレクトロスプレーイオン化質量分析系を用いて生成物の測定を行った。光酸化反応が起こっている可能性が示唆される結果も得られてはいるが再現性が乏しいため今後も研究を続ける。レーザーが故障しており出力強度が不安定であったことが一因であると考えている。次に電子照射実験について説明する。全ての実験は超高真空チャンバー内で行った。アモルファス氷を作製するときは基板温度を8 Kにして、脱気したH2Oをチャンバー内に満たす方法で作製した。また、多結晶氷はアモルファス氷を152 Kでアニールすることでを作製した。その後、電子銃を用いて200 eVもしくは300 eVの電子を2時間照射した。作製した氷の構造及び電子照射後の生成物はフーリエ変換型赤外反射吸収分光計を用いて測定した。両構造の氷において新しい生成物は確認できなった。原因として電子のエネルギーが高いため生成物ができたとしてもスパッタされてしまっていることがスペクトルから示唆された。メタノール氷を用いた先行研究との比較により製作した装置の性能は確認できている。実験装置に問題はないので、より低エネルギーの電子を用いた研究を続けていく。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021
All Presentation (3 results)