Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究では、蛇紋岩生命圏を対象として、ゲノム解析、地球化学的分析を組み合わせることで、この生命圏に存在する生命代謝の駆動力と制約を明らかにする。それにより、同じくかんらん石と水の反応である蛇紋岩化反応サイトを持つ他天体(エンセラダス、エウロパなど)における生命存在の可能性を追求する。
氷に覆われた土星の衛星エンケラドスには海水と分子状の水素が存在することが突き止められ、エンケラドスにおける水素は炭素質コンドライトの蛇紋岩化反応の結果であると推定された。これまで、蛇紋岩化反応が支える生命に関しては、エネルギー論に基づく理論研究などから「メタン生成菌がいる可能性がある」といった仮説が提唱されてきたが、実際の強アルカリ性・超還元性のThe Cedarsの蛇紋岩湧水のゲノム解析では、メタン生成菌はほとんど検出されず、我々の知見にない代謝経路・生存戦略を持つ生命が多く存在することが明らかとなった。これらの結果は、地球に現存する蛇紋岩化反応に支えられる生命ですらその理解が未熟であることを示すととともに、そこには、たとえ水素と二酸化炭素が存在したとしても、メタン生成以外の代謝の方が優位になる駆動力、または、メタン生成でエネルギーを得ることが不利となる制約があると考えられた。ここでは、6つの化学特性の異なる蛇紋岩化反応サイトで見られる代謝を、画一的手法でゲノム解析し、各物理・化学因子(例えば、pH、Eh、ガス組成など)との相関解析を行うことで、各々の因子が選択する生命代謝を明らかにした。その結果、1)酢酸生成菌が多く存在すること、2)その基質として、二酸化炭素のみならず、ギ酸や一酸化炭素を使う微生物が多くいる可能性が示唆された。これは、強アルカリ環境において、微生物の使える二酸化炭素(CO2、もしくは、HCO3-)が少なく、その多くがCO32-となり、さらには、CaCO3といった、鉱物へと化学種を変化させていること、さらには、CO2と水素が反応することで、CO、ギ酸、メタンといった物質に非生物的に変換されることに起因すると考えられた。一方で、二酸化炭素を基質とするものに関しては、高親和性の炭酸トランスポーターを持ち、それがこの環境に広く分布していることも明らかとなった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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All Int'l Joint Research (3 results) Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Peer Reviewed: 3 results, Open Access: 1 results) Presentation (7 results) (of which Invited: 7 results)
Journal of Geophysical Research: Biogeosciences
Volume: 126 Issue: 6
10.1029/2019jg005542
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
Volume: 71 Issue: 8
10.1099/ijsem.0.004945
Volume: 126 Issue: 11
10.1029/2021jg006316