Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
高分子・液晶などが示すジャイロイド構造は自然が作る美しい造形である.ジャイロイド構造の形成機構については数多くの研究があるが,その多くは連続体描像に基づく.一方,液晶では単位格子の大きさは分子長の数倍なのでこの構造の分子論的に記述が可能であり,実際,研究代表者はある種の液晶について,そうした記述を成し遂げた.本研究では,この成果に立って,実験と理論の両面から,ジャイロイド構造形成機構の動的分子論を探究する.
液晶性ジャイロイドの形成機構を明らかにするための基礎研究として,並行配列を嫌う古典スピンモデルの解析に注力した.液晶性ジャイロイド相に関する実験研究から分子の逆紡錘型形状の重要性が明らかになっているので,隣接分子が平行でも反平行でもない配列を好む場合の基本的な挙動は検討に値する.いくつかの2次元格子上で古典無頭スピン系のシミュレーションを行ったところ,三角格子に限って種々の異常な挙動が見られた.まず,bipartiteな格子上の基底状態と質的に異なる基底状態(最低エネルギー状態)を持つのでその性質を明らかにした.bipartiteな場合には基底状態は連続的に縮退しているが,三角格子やカゴメ格子では,フラストレーションは無いが,有限の巨視的エントロピーを持つ縮退状態にある.この状態は離散的であり,計算で得られた熱容量からも確認できた.有限温度については,Hohenberg-Mermin-Wagnerの定理(HMW定理)によれば,連続的な配向自由度を持つ古典スピン系は有限温度で相転移を示さないと考えられているにも関わらず,三角格子では局所的な回転対称性の破れを伴う相転移が起きている事がわかった(出版済).このHMW転移に一見反する相転移の存在について外場を印加したシミュレーションにより情報の収集を行いいくつかの知見を得た(出版準備中).一方,長距離秩序を持たず局所的な対象性の破れが相転移をもたらしているため,格子の幾何構造の重要性に注目し正多面体型スピンクラスターの「相転移」の可能性について検討した.必要な幾何構造を満たす「多面体」が高次元を含めごく少数しか存在しない事実に立脚し,それらのすべてについてシミュレーションを実施して,いずれにの場合も外部基準を必要としない定性的な変化が物性量の温度変化に現れることを見出した(出版準備中).
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2022 2021
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Invited: 1 results)
Journal of the Physical Society of Japan
Volume: 90 Issue: 12 Pages: 124003-124003
10.7566/jpsj.90.124003