Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
ヒトは生育時の言語環境により、特定の言語に特有な音の識別能力を発達させる。この識別能力は、生得的な能力を基盤として、周囲の会話を聞くなどの生育時の聴覚経験により発達する。このような、聴覚経験に依存した音識別能力の発達基盤として、記憶・学習機構の介在が考えられるが、その分子神経機構は未解明である。そこで本研究計画では、「豊富な分子遺伝学ツール」「同定された操作可能な聴覚神経回路」という実験上の優位性を持つショウジョウバエを新たな解析モデルと捉えて、記憶の制御分子がどのようにして歌識別学習を成立させるかを解明する。
本研究では、多くの動物が示す歌識別学習のメカニズムを理解するため、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)をモデルとした解析を進めた。キイロショウジョウバエの歌識別学習とは、幼少期(羽化直後の若い成虫)に「種に固有な求愛歌」を聞いた経験を持つことにより、成熟後の歌識別の精度が劇的に向上する、という現象である。この歌識別学習を成立させる分子機構に迫るため、哺乳類から昆虫までで広く保存されている記憶分子であるカルシウム依存性アデニル酸シクラーゼ(AC)に着目し、ニューロンの種類ごとにその発現を抑制することを試みた。前年度までの解析により、アセチルコリン作動性、グルタミン酸作動性、GABA作動性の3種類のニューロン集団のうち、ニューロン数が比較的少ないグルタミン酸作動性ニューロンとGABA作動性ニューロンでそれぞれ、RNAi法によりAC遺伝子の発現を抑制することで、歌識別学習が変化する傾向を確認している。当該年度はこの解析をさらに進めた。その結果、グルタミン酸作動性ニューロンとGABA作動性ニューロンでの、発現抑制した際の学習表現型を確認した。さらにこの2種類のニューロンでのAC遺伝子の発現を抑制では、異なるタイプの学習変化が検出されることを見出した。このことは、異なる神経伝達物質を放出する複数のニューロンが、多層的にキイロショウジョウバエの歌識別学習を制御している可能性を示している。以上の解析により、歌識別学習を成立させる分子機構の一端が解明された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021 2020 Other
All Int'l Joint Research (2 results) Journal Article (2 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 2 results) Presentation (7 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Invited: 3 results)
Aging Cell
Volume: 20 Issue: 6
10.1111/acel.13379
eLife
Volume: 9
10.7554/elife.59976