Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
がんの発生やその進展は、異なる遺伝的背景を持つ細胞同士の競合現象「細胞競合」により、正にも負にも制御されることが近年分かってきたが、その分子実体はいまだ不明である。本研究ではショウジョウバエをモデルとし、細胞競合を介したがん促進現象(1)がん細胞が周辺細胞を駆逐しながらその領地を拡大していく“スーパーコンペティション”および(2)敗者から勝者へのスイッチングの分子機構を、遺伝学的手法やRNAseqを初めとした多角的アプローチにより解析する。さらに、両現象をつなぐ分子基盤を明らかにすることで、遺伝的細胞ダイバーシティーが駆動する細胞間相互作用の動作原理とそのがん制御機構の理解を目指す。
がんの発生やその進展は、異なる遺伝的背景を持つダイバーシティーに富んだ細胞間の相互作用(“細胞非自律的”な作用)により、正にも負にも制御されることが近年分かってきた。このような「がんを制御する細胞間相互作用」の性質を規定する因子として、「細胞競合」が注目されつつある。細胞競合とは、近接する細胞同士がその生存を競い合う現象で、生体内環境への適応度が相対的に高い細胞が低い細胞を排除する、細胞の「適者選択」システムと考えられる。最近の研究により細胞競合は、がん細胞が周辺細胞を駆逐しながらその領地を拡大していく“スーパーコンペティション”現象や、前がん細胞が周辺の細胞環境に依存して“敗者”から“勝者”へとスイッチする現象に関わることが示され、がん制御を担う重要なシステムであると推察されている。しかしながら、その分子実体はいまだ不明な点が多い。本研究では、ショウジョウバエ上皮をモデルとし、進化的に保存されたがん抑制性のHippo経路シグナルが不活化した「非典型的カドヘリンfat 変異細胞」群によるスーパーコンペティションを制御する遺伝子群を単離・同定する遺伝学的スクリーニング系を構築・その実施を開始した。これまでに、CRISPR-Cas9技術により変異を導入した約560系統の突然変異系統(国立遺伝学研究所・近藤周先生、齋藤都暁先生との共同研究)についてスクリーニングを行い、fat変異細胞によるスーパーコンペティションを抑制する系統を2系統、促進する系統を9系統単離することに成功した。今後さらにスクリーニングを大規模に展開し、責任遺伝子の機能と役割を遺伝学的に解析していくことで、スーパーコンペティションを制御する分子基盤を明らかにすると同時に、遺伝的細胞ダイバーシティーが駆動する細胞間相互作用の動作原理とそのがん制御機構の理解を目指す。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results)
PLoS Genetics
Volume: 17 Issue: 1 Pages: e1009300-e1009300
10.1371/journal.pgen.1009300
120006954062